第10回 胃の病気と検査


 『胃痛』『胸焼け』『食欲不振』など胃に関係した症状は内科の日常診療でとても多いのです。
 これらの症状が必ずしも胃の病気によるものであるとは限りませんが、確率的には胃から来ている事が圧倒的に多いので必要に応じて胃の検査をします。また日本人は胃癌が多いので『胃かもしれない症状』があった時に『それを機会に胃の検査をしておく』ことはたいへん有意義です。

 重要な病気は胃の内側にできる
 胃の病気はたくさんありますが、その中で特に重要なのは@胃ガンA胃潰瘍(十二指腸潰瘍)B胃炎C胃ポリープです。これらはみな胃の内側にできます。
 @胃ガン:胃の悪性腫瘍です。はじめ内側に小さく出来ますが数年間で大きくなり胃壁を貫いて胃の外側に広がります。また血管やリンパにそって転移します。胃ガンは命にかかわる病気です。そして日本人にはたいへん多い病気です。しかしわが国ではこの病気の研究はたいへん進んでいて診断も治療も世界一のレベルです。ですから定期的に検査を受けていれば、もし胃ガンになっても手遅れになる心配はまずありません。
 A胃潰瘍(十二指腸潰瘍):胃酸のために胃や十二指腸の内側が傷つきえぐれた状態です。えぐれの大きさは米粒くらいから鶏卵大くらいまで色々です。
 B胃炎:胃酸のために胃の内側がただれた状態です。ただれの程度は出血を伴う激しいものから放っておいても構わないものまで色々です。
 C胃ポリープ:胃の内側に出来るイボです。例えば皮膚のイボと同様でふつうは将来ガンになる心配はありません。

 胃透視と胃カメラ
 胃の内側の様子はそのままでは分かりませんから、何らかの技術で中の様子を観察します。それが胃透視と胃カメラです。『胃透視』は−空気は通過するがバリウムは通過しないという−レントゲンの性質を利用した技術です。患者さんにバリウムと空気(の出る薬)を飲んでもらってレントゲンで観察しますと胃の中の様子がかなり詳しく分かります。『胃カメラ』はもっと直接的で小さいテレビカメラを胃の中に押し込んで内側を観察します。

 ふたつの検査法は一長一短でとちらかが絶対にすぐれているとは言えません。しかし一般に胃カメラはちょっと苦しいが診断が確実で早い、胃透視は胃カメラに比べてその時は多少楽だが診断能力はかなり劣ると言えます。それで最近では胃の検査は始めから胃カメラでという意見が専門家の間では強くなっています。
 筆者は胃は丈夫ですが自分の健康管理のため毎年胃カメラをうけます。いつも胃ガンの早期診断を目指している経験から言わせてもらえば、自分が受けるならやっぱり胃カメラです。
 次に胃透視と胃カメラの比較を表にしてみました。じっくりみて納得のゆく方法で検査を受けて下さい。

 透視(バリウム、レントゲン)胃カメラ(内視鏡)
診断能力比較的劣るすぐれている(約3倍)
苦痛(個人差)比較的軽い苦しい
検査所要時間5〜6分約3分
結果判明約半日後終了と同時
次の精密検査内視鏡(後日)組織検査(同時)
検査の後時々、便秘(バリウム)30分〜1時間で回復
危険度放射線の被曝まれに事故(筆者は未経験)
コスト
13,680円
(フィルム11枚)
13,320円(25コマ)
組織検査時は12,100円追加
(参考)当院年間検査数約500例約700例