第11回 糖尿病


 糖尿病とは
 血液中の糖分が濃すぎる病気です。そしてそのために血管を中心として全身がいわば『砂糖づけ』になって次々とトラブルの起こる病気です。

 血液中の糖分は
 正常では空腹時血液1デシリッターあたり110mg以下、食後2時間のピークで110〜140mgです。糖尿病では空腹時で140mg以上、2時間で200mg以上になります。この数値の事を『血糖値』と言います。

 糖尿病という言葉
 血糖値が150以上になると尿中に糖が出てきます。昔は血液中の糖を測定する事が出来ませんでしたから、尿に糖が出ることにだけ注目して糖尿病という病名がつきました。それが糖尿病という言葉の由来です。

 腎性糖尿
 ところで尿中に糖が出るのは糖尿病の時だけではありません。血糖値が150以下でも体質的に尿に糖が出ることもあります。これを腎性糖尿と言います。病気ではありません、体質です。
 又たまたま体調で尿に糖が出ることもあります。ですから尿に糖が出たときはあわてないで本当に糖尿病なのかよく調べる事が大切です。

 HbA1c(読み方:ヘモグロビン・エーワンシー)
 血糖値も体調や数日間の食生活の影響を受ける事があります。それで必要に応じてそういう事には影響を受けない検査が使われます。
 HbA1cはヘモグロビン(血液中の赤み)の中でエーワンシーという部分の割合をパーセントで表したものです。エーワンシーはブドウ糖を材料にしているので血糖値が高いとエーワンシーのパーセントも高くなります。過去約2カ月間の血糖値を反映します。正常値は6.3以下です。それ以上は異常高値です。
 HbA1cが高いと分かった時は、糖尿病または疑似糖尿病なので精密検査(負荷試験)が必要です。また分かっている時は経過観察が必要です。糖尿病のコントロールの指標に使われます(判定:優<7、良<8、可<9、9<不可)。

 合併症が問題
 糖尿病は重症になると喉が渇いたり意識が変になったりします。自分でもおかしいと分かります。  しかしまだ自覚症状のない時期でも血管の『砂糖づけ』はじわじわと進行します。そこが問題なのです。糖尿尿で血管が砂糖づけになってボロボロになることを糖尿病の血管合併症(以下『合併症』と略す)と呼びます。合併症には動脈硬化症と細小血管症があります。
 (1)動脈硬化症
 動脈硬化の事は今までもけんこうニュースに書いて来ました(2回:高脂血症、5回:血圧)。糖尿病は動脈硬化の原因として最も重要なもののひとつです。動脈硬化は@虚血性心疾患(狭心症と心筋梗塞)A脳血栓の原因になります。
 (2)細小血管症(3大合併症)
 @腎臓A網膜(眼)B神経の細かい血管が傷んでそれぞれの部分の症状が出現します。腎臓が悪くなると尿毒症、網膜では失明です。神経ではインポテンツや内臓障害の原因になります。

 治療の目的
 糖尿病治療の最終目的は合併症を予防する事です。極端に言えば血糖値が下がらなくても合併症が防げればそれで良いのです。しかし現在では血糖値をコントロールするのが最も安全で確実な方法と考えられています。
 それで合併症がどの程度かというと検査を定期的に行う必要があるのです。