第16回 薬の名前を覚えましょう


1.高血圧や胃潰瘍などで毎日薬をのんでいる患者さん
 あなたは、毎日のんでいる薬の名前を言えますか。もし名前を言えないならこの機会に是非覚えてください。
 薬の名前をおぼえていると、診療上とても良いことがいくつかあります。
 @何かの都合でかかりつけの病院以外を受診しても同じ薬が出してもらえます。
また、くすりの名前が分かれば何の病気でどの程度の重症度なのかもすぐ分かってもらえ、適切な処置が受けられます。
 A別の症状で別の病院を受診する時も、いつもの薬が言えればそれに合わせて適切な治療がしてもらえます。薬の中には、見かけは違っていても中身は同じ場合や、同時に使うと危険な組合せもたくさんあります。重複した投薬や危険な組合せを避けるためにも、薬の名前を覚えましょう。

2.薬で副作用が出たことのある患者さん
 薬で副作用が出たときは、その薬を処方された病院で名前を確認して是非覚えて下さい。
 使って不都合な薬がはっきり分かっていれば、次からはそれに応じて治療計画を立てられます。しかしばくぜんと『抗生物質』とか『解熱剤は合わない』と言われても対応が困難です。
 『いつ頃、どういう症状で○○○という名前の薬をのんだら蕁麻疹が出た』と言えれば、はじめて行く病院でも安心して治療を受ける事が出来ます。

3.風邪や腹痛などのちょっとした症状でよく医者にかかる患者さん
 こういう病気では薬が合うか合わないかは本人の感じがいちばん確かな目安です。名医が考えた処方でも本人にとって効果がなければ、何の価値もありません。
 だから薬を飲む前と飲んだ後で症状がどう変わったか、胃にこたえるとか眠くなるとか不愉快な副作用は無かったか、全体としてこの薬があなたに有用だったのか、そうでないのか味わってみてください。そして『×××は自分にはよく効く』とか、『合わないようだ』とか覚えておいて次の診察の時に医者に教えて下さい。それはとても参考になります。

4.薬の名前は覚えやすい
 薬の名前はちょっと見ると難しそうですが、口に出して言ってみると意外に口調が良くて覚えやすいものです。
 なにしろ製薬メーカーは医者に薬の名前を覚えてもらって、使ってもらいたいのです。変な名前では売り上げにひびきます。そのために言いやすい覚えやすい名前を工夫しています。
 処方箋を受け取ったらそのまま薬剤師に渡すのではなく、自分で声に出して読んでみて下さい。何度かやっているうちに覚えられます。

5.どうしても覚えられないとおっしゃる患者さん
 無理する必要はありません。でも処方箋を受け取ったらそれを見て手帳に書き写すくらいは出来るでしょう。自分の体は自分で管理するのが基本です。医者を信用してくださるのは有り難いが、まかせっきりでは困ります。少しばかりの手間はかけましょう。がんばってください。

6.別の病院でいつも薬をもらっているが、今回たまたま当院に来た患者さん
 今日うまく薬の名前が言えましたか。うまく言えた患者さんには、筆者は万全を期して処方しました。しかしうまく言えなかった患者さんには、当たりさわりの無い治療しか出来ませんでした。お支払い頂く診察料は同じです。やっぱり覚えておくほうが得ですね。