第18回 重症度に応じた治療法
前回はコレステロールといっても重症も軽症もある。重症度をまず知る事が大切だと書きました。今回はそれぞれの重症度に応じて具体的にどういうことに注意すれば良いのかを書きます。
はじめに復習。重症度分類の表を見てください。そして自分はどのランクにいるのか再確認して下さい。
脂肪の種類 | 正常 | 軽症 | 中等症 | 重症 |
総コレステロール | 〜219 | 220〜259 | 260〜299 | 300〜 |
LDL(悪玉) | 〜139 | 140〜179 | 180〜219 | 220〜 |
中性脂肪 | 〜149 | 150〜299 | 300〜749 | 750〜 |
1.重症度に応じた治療法
(1)軽症の場合:食事治療と運動治療をします。このくらいの軽い異常値では普通、薬は使いません。
一般に薬物治療するのはその手間、コスト、副作用のリスクなどを天秤にかけて、それに見合うメリットがはっきりしている場合だけです。
食事治療は@肥満を避ける。A出来るだけ和食中心にする(油物を避ける)。Bコレステロールの多い食物*は少なく。Cアルコールは控えめに。これだけです。
運動治療は毎日30分(3キロメートル)速歩きする。これだけです。
これだけ注意していれば、これ以上悪くなる心配はまずあり得ません。しだいに良くなってくるはずです。生活に注意して半年毎に検査を受ければ、それ以上の処置は必要ありません。
*コレステロールの多い食物の代表は卵、レバー、ウニ、イカ、カイなどです。
(2)中等症の場合:他にも動脈硬化の要素がないかをチェックします。つまり高血圧、糖尿病、ヘビースモーカーの人は要注意です。またすでに今まで心筋梗塞や脳梗塞の発作を起こしたことがある場合も要注意です。
こういう場合は服薬で人工的にコレステロールの値を下げます。
こういう要素がない場合は、できるだけ薬には頼らないという方針を通します。生活治療と定期的な血液検査(年に3〜4回)で様子をみます。生活に注意しても改善が見られない場合は薬物治療も止むを得ません。
(3)重症の場合:このくらいの高度異常値になりますと、心筋梗塞や脳梗塞といった致命的な病気がすぐに続いて起きる危険性が非常に高くなります。ですから取りあえず服薬を開始します。薬物治療をしていても生活治療は平行します。生活の歪みが是正されれば、薬は要らなくなる事もよくあります。
2.中性脂肪の多い場合
中性脂肪も人体の油の一種です。中性脂肪はエネルギー源として重要です。
中性脂肪の値は食事の影響を受けやすく、8時間以上の十分な絶食をしないで採血するとそれだけで異常値が出る事があります。また絶食が十分でも、前の日にアルコールを飲みすぎたりすると異常値となる事もあります。
さて十分条件をととのえて検査すると、中性脂肪は149mg/dl以下が正常です。そして異常の場合はおもての表の様に軽症、中等症、重症に分類されます。また1000以上はパニック値といって急性膵炎になりやすく、その急性膵炎は死亡率が高い事で有名です。
中性脂肪は生活治療がたいへん良く効果をあらわします。肥満を是正する事、アルコールと甘いもの(果物を含む)を控える事、毎日30分(3キロメートル)速歩きすること。これだけ実行すればまず大部分の異常値はなおります。
こういう事に注意しても中等症以上の異常値が続く場合は、服薬も止むを得ないでしょう。その場合も生活治療を継続して行なう事は大変重要です。そして安易に薬に頼らないことが大切です。
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