第2回 高脂血症(コレステロール)


 (1)高脂血症とは何か?

 読んで字の如し、血液中の脂肪の濃度の高い状態を指します。人間の血管はいわばゴムホースのような物で、その内側を一時も休むことなく血液が流れています。その血液中の油分の濃い状態が高脂血症です。こういう状態が長期間続くと、ちょうど下水管の内側にベットリとゴミが付着するように、血管の内側に油のカスが付着してしまいます。そのため血管がつまったり、破れたりしやすい状態になってしまいます。心臓の血管がつまると心筋梗塞、脳の血管が破れると脳出血、どちらも致命的な病気です。またこの血管の変化がいわゆる動脈硬化です。
 ところで人体の脂肪としてはコレステロール中性脂肪という2大成分があります。

 図を見て下さい。これはコレステロールの多い人は虚血性心疾患(狭心症と心筋梗塞)や脳血管障害(脳出血と脳梗塞)が実際に多いという事を示しています。 中性脂肪にもコレステロール程ではないが動脈硬化と関係があることが分かっています。いずれにしても高い値のままほおっておく訳にはゆかないのです。
(2)原因
 (1)何か原因になる病気が有る場合
 糖尿病など、もとになっている病気があって発症してくる場合はその病気を治療すれば高脂血症は治ります。原因疾患がないかどうかの検査は重要です。
 (2)食生活に原因のある場合
 食生活の欧米化、偏食によってもおこります。治療の欄、参照。
 (3)はっきりとした原因が見つからぬ場合
 実際にはこういう場合もたいへん多いのです。食生活に問題が無いのに高脂血症、いわば体質性というひとは結構多いのです。

(3)治療
 (1)食事治療
 @総カロリーの制限
 身長から理想体重を計算します。理想体重*に対して実際の体重が10%以内の人は問題ありません。それ以上の人はやせる努力をして下さい。 *理想体重の計算法:身長(メートル)の2乗掛ける22、例えば身長167cmの人は1.67・.67・2=61.4kgとなります。

 A食事内容の工夫
 コレステロールの多い人は食事中のコレステロールを減らします。コレステロールの多い食物の代表は卵、レバー、バター、ウニ、イカ、カイなどです。1日300mg程度に控えると良いとされています。また植物油、魚油は血液中のコレステロールを減らす働きがあります。
 中性脂肪の多い人はアルコール、甘い物(果物も含む)を控える事。

 (2)運動療法
 毎日3キロメートルの速歩きは、コレステロールを10%、中性脂肪を20%減らすと言われています。バスや電車をひと駅分歩いてみてはどうでしょう。

 (3)薬物療法
 食事療法や運動療法で十分に効果が得られないことは珍しい事ではありません。そういうときにもっと厳しい食事制限や運動負荷をするのはあまり意味がないと考えられています。なぜなら体内のコレステロールのうち食事由来は約4分の1にすぎないし、実際には原因の欄に書いた様に体質性の高脂血症もかなり多いからです。また治療の最終目標は楽しい人生を送ることです。食事治療のために人生が楽しめないとしたら本末転倒という考え方もあります。
 必要に応じてあっさりと薬を使うのが良いと思います。しかしその場合でも食事療法や運動療法は平行して続けるべきです。そうすることによって軽い薬、少ない薬で治療することができます。

 (4)いつまで治療するのか
 高脂血症の治療はいわば近視の眼鏡のようなものです。治療を止めればまた脂肪の値は高くなります。だからもう開き直って長期戦です。これは覚悟してください。

 *HDLコレステロール:厳密にはコレステロールには善玉と悪玉があります。上に書いて来た事は悪玉コレステロールの話です。善玉コレステロールのことをHDLコレステロールといいます。だから総コレステロールが高い場合には次に善玉悪玉の比を調べる必要があります。