第20回 大腸の病気


 近年大腸ガンの増加に伴い、大腸検査が積極的に行なわれるようになりました。それ にともない、ガン以外の大腸の病気もいろいろ見つかるようになりました。  今回ここでは大腸の病気について説明します。

(1)大腸の構造(右図)
  大腸は長さ約1.2メートル、太さ約7センチメートルの中空の臓器です。
  小腸に続いてお腹の右下部から始まり上にのびて右上部、次に横にのびて左上部、今度は下に向かって左  下部、そのあとはS字状に蛇行して最後は肛門に続いています。それぞれの部分を盲腸、上行結腸、横行結  腸、下行結腸、S状結腸、直腸と呼びます。こうしてお腹の中をぐるりと大きくひと回りしています。
  その働きは小腸で栄養を吸収された食物のカスから水分を吸収して大便を作ることです。

(2)大腸の病気
@大腸ガン:大腸に内側できる悪性の腫瘍です。大きくなると出血や腸閉塞を起こすこ  とがあります。また肝臓などに転移すると致命的です。しかし初期のガンは症状はあ  りません。また初期のガンの救命率はほぼ100%です。
A大腸ポリープ:ポリープとはイボの事です。大部分は良性ですが、その一部(約5%)  は悪性化(ガン化)します。また既にガン化している場合もあります。しかしポリー  プ自体は珍しい病変ではなく、成人では3人に1人くらいはポリープがあるものです。  ですからポリープが見つかってもあわてて切除する必要のないことが実際には多いの  です。
B大腸憩室症:腸の壁には神経や血管が通る小さな穴が無数にあります。 その穴から腸の粘膜がふくろ状に押し出されている事があります(図)。 ふくろの大きさは小指の先くらいです。これ自体は病気とは言えないが、 中に細菌が繁殖したり出血の原因になったりする事がまれにあります。
憩室は腸にガスのたまりやすい人(過敏性腸症候群など)には、よく見られる所見です。
C過敏性大腸(過敏性腸症候群):腸の蠕動がスムーズにゆかず、 そのためにお腹にガスがたまり、痛んだり下痢や便秘をしやすい状態。
D潰瘍性大腸炎、クローン病:どちらも原因不明の腸の炎症性病変です。 比較的珍しい病気ですが開業医でも時々見つかりますから、注意が必要です。
E腸結核:腸の結核も比較的めずらしいが時々あります。
F虚血性腸炎:腸に栄養を与えている血管の血流が一時的に遮断され腸が炎症をおこす病気です。 いわば腸の狭心症です。普通は安静、断食で自然に治ります。
G感染性腸炎:腸に細菌やウィルスが感染して炎症をおこすものです。たとえば食中毒、 赤痢、感冒性胃腸炎。症状からこういう腸炎が疑われる場合は内視鏡検査はしない事が多いのですが (しても新しい情報が得られない)、もし内視鏡検査をすると腸の内部は赤くただれていたり出血していたりします。
H抗生物質による腸炎:風邪などで抗生物質を使いその副作用で腸炎が起こる事があります。 これは薬の作用で腸の中の良い菌も殺されて、結果的に悪い菌がはびこるからです。感染性腸炎の一種です。