第21回 細菌性食中毒


 食物に細菌が付着して、そのためにおこる食中毒を『細菌性食中毒』といいます。細 菌性食中毒は、菌が体内で増殖して症状のおこる『感染型』と、菌の毒素で症状が出る 『毒素型』があります。

1、腸炎ビブリオ
 ビブリオは長さ2mm、バナナ形の細菌です。この菌は夏期に海水中で増殖し、魚介 類を汚染します。ヒトがそれを生食しますと、半〜2日で体内で増殖し、腹痛、下痢な どが出現します(感染型)。たいていは2〜3日で回復します。わが国の食中毒のうち、 もっとも頻度が高く、食中毒の30%を占めるといわれています。ビブリオは熱、消毒 に弱い菌です。

2、サルモネラ
 長さ3mmの細長い菌です。家畜、家禽、イヌ、カメなどさまざまな動物が保有して おり、卵に注意が必要です。熱、消毒に弱い菌です。
 汚染された食物の摂取後、半〜2日で菌が体内で増殖し腹痛、下痢、発熱などを発症 します(感染型)。1時間程度で回復し、死亡はまれです。

3、黄色ブドウ球菌
 直径1mmの球形(ブドウの形)で、にきび、けがの化膿部などにいます。調理者の 手、指などに怪我があると、そこからから菌が食物に入り、食物中で菌が増殖し毒素を 産生します。菌は熱に弱いのですが、毒素は耐熱性です。その毒素が口から体に入ると、 3〜6時間で嘔吐、腹痛、下痢などが出現します(毒素型)。1〜3日で回復します。
ビブリオについで多い食中毒です。

4、病原性大腸菌
 大腸菌は長さ4mmの細長い菌で、健康な動物の大腸の中にもいる菌です。免疫反応 のパターンから何万種類にも分類されますが、大部分は無害です。しかし一部に病原性 のある菌種があります。
 そのひとつがO−157で、これはもともと牛や羊の腸にいる菌ですが、それが人間 の体内に入って条件により(体力の弱っている人など)増殖、発症します。ベロ毒素と いう毒素を菌内にもっていて、この毒素が腸の粘膜をただれさせ出血、血便を引き起こ します。これを腸管出血性大腸炎といいます。
 病原性大腸菌にはこの他にも腸管病原性大腸菌や毒素原性大腸菌などが知られていま す。大腸菌は熱や消毒には弱いが、低温には強い菌です。

5、カンピロバクター
 長さ3mmのらせん状の菌。哺乳動物や鳥類の胃腸に普通にいる菌です。人間には不 適切に調理された鳥獣肉や未殺菌のミルクを介して感染します。発熱を伴う腸炎で、あ らゆる年齢で健康人もおかします。夏から秋に多発します。

6、ボツリヌス菌
 長さ5mmの細長い菌で、土壌中に広く分布しています。菌は酸素に弱いのですが、 熱にはめっぽう強いです。ですから無酸素状態の食品中(いずし、真空パックのからし 蓮根など)で菌が繁殖し、毒素が口から体内に入ることで発症します(毒素型)。この 毒素はボツリヌス毒素と呼ばれ、致死性の神経毒です。しかしこの毒素にも弱点はあり、 それは熱に弱いということです。つまり食べる直前に加熱処理すれば大丈夫なのです。

 食中毒を防ぐ基本原則
@夏場は生ものをなるべく避ける。
A食材は常に新鮮なものを選び、低温(4°C以下)で保存する。
B手指に傷のある時は、食物が直接傷に触れない様にする。
C食べる前にはよく加熱し、調理後すばやく食べる。
Dまな板やふきんはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌し、よく乾燥させておく。
E手洗いを励行する。
F冷蔵庫を過信しないこと。温度管理とともに定期的な掃除も大切。