第24回 高尿酸血症、痛風の話


1、尿酸とは
 尿酸は体内の老廃物の一種です。細胞の中には遺伝子がありますが、遺伝子は核酸 (かくさん)という物質で出来ています。核酸が分解されると尿酸が出来ます。
 尿酸は最終的には腎臓から尿に排泄されます。尿酸という言葉は『尿に排泄される酸』 という性質に由来しています。

2、高尿酸血症、痛風とは
 血液中の尿酸濃度が高いとき高尿酸血症と言います。尿酸濃度の正常値は、7.0mg/dl以 下です。また尿酸が関節にたまって炎症(関節炎)を起こすとき、痛風と言います。

3、内臓障害
 痛風の発作はとても痛いので有名ですが、命にはかかわりません。恐いのは同様の事 が内臓で起こることです。内臓に尿酸がたまって炎症を起こしても、内臓の神経は手足 と違って痛みません。でもその間に内臓はしっかりと傷ついて機能障害が起きます。
 例えば腎臓です。この場合は放置すると最終的には尿毒症になります。

4、くすりについて
 痛風で使うくすりは大きく分けて2種類あります。
 ひとつは発作の時に炎症をおさえて痛みをやわらげる薬(抗炎症剤)です。速効性が あり明らかに痛みや腫れがとれます。しかしこの薬は長期に使うのは危険です。
 もうひとつは血清の尿酸値を正常化させ、痛風発作を予防する薬(高尿酸治療薬)で す。発作の時にこの薬で尿酸値を正常化させても、炎症はすぐには治りません。

5、高尿酸血症のおこる仕組みとそれに応じた薬の使い分け
 高尿酸血症には、原因として2つの仕組みが考えられています。まず体の中で尿酸が できすぎる場合(産生過剰型)、そして尿酸がスムーズに腎臓から排泄されない場合(排 泄障害型)。  その人がこの2つのタイプのどちらに属するかは、尿と血液を同時に採取して成分を 分析すると分かります。これを尿酸排泄テストと呼んでいます。  また高尿酸治療薬は産生過剰型には産生抑制剤、排泄障害型には排泄促進剤と使い分 ける事で、より効果的に治療できます。

6、生活上の注意
 生活上の注意はまず肥満を避ける事が一番大切です。次に、ご馳走を食べ過ぎない事、 アルコールを控える事が大切です。レバーや肉は昔から良くないと言われていますが、 要は程度問題です。

7、高尿酸治療薬の使い方
(1)服薬を要する目安
 痛風発作の既往がある人で生活に注意しても血清尿酸値が7.0を超える値が続く場合 と、発作の既往が無くても尿酸値が9.0を超える場合は、服薬治療の対象です。

(2)使用中のトラブル
 @発作中でない人に薬をスタートすると発作が起こることがあります。
 薬が効いて血中尿酸値が急速に正常化すると、一時的に関節の尿酸濃度とアンバラン スが生じてかえって発作が起きる事があります。これは薬が効いている証拠ですからあ わてて薬を止めないで、抗炎症剤を併用します。数日間で抗炎症剤は不要になります。

 A尿酸排泄促進剤で尿管結石ができる事があります。
 尿酸排泄促進剤は尿酸を尿に出す薬ですから尿中の尿酸が増えて、尿管結石ができる 事があります。この予防に重曹を併用する事があります。また産生抑制剤に切り替える 事もあります。

(3)高尿酸治療薬をいつまで続けるのか
 高尿酸治療薬をのみますと血清尿酸値は改善します。しかしそれはくすりの一時的な 効果です。薬が切れると元どおりの値になります。ですから継続服薬が原則です。
 では一生のみ続けなければならないのでしょうか。場合によってはそうです。しかし 生活の注意で薬が不要になる場合もかなりあります。
 筆者もこういうケースを時々経験しますが、中には10年以上服薬したあと薬が不要 になった場合もありました。安易に薬に頼らず生活の努力をすることが大切です。