第26回 自分のカルテを作ってみよう


 今までにもお伝えして来た事ですが、筆者は、『患者さん自身による努力』を大切な 要素と考えています。これを実行するため、患者さんが自分で自分のカルテを作って みる事を勧めています。

(1)『自分のカルテ』を作ってみる
 自分のカルテとは病院のカルテとは別に、自分で作るカルテです。
 まずノートを1冊用意します。それに診察の時にさしあげている血液データや内視鏡 写真、そして薬局でもらう薬の説明の紙などをペタペタと貼ります。その時、医者から 言われた事を、覚えていたら書き込みます。例えば『アルコールは控えて下さい』とか 『次は半年後に検査しましょう』とかです。
 このノートには他の病院での資料、会社の健診の個人票等も全部貼り付けます。また 自分で血圧を測った時はその結果も記入します。たまたま体調の悪かった時は忘れない うちに『○月○日、頭痛』とか、記入します。
 要するに自分の体に関する記録は全部このノートに記録してしまうのです。
 この様にしますと自分の健康状態がよく分かるようになります。そしてより良い健康 管理と治療が可能です。また、何かの事情で他の病院を受診する時、このノートを持参 すれば、日頃の状態がすぐに分かってもらえ、より適切な処置が受けられます。

(2)ご希望なら病院のカルテをお見せします
 最近、情報公開の立場からカルテの開示が話題になっています。
 筆者は開示に原則的に賛成です。ですから、希望があればいつでもお見せしますし、 時にはこちらからお見せして診療に使っています。
 しかし医者の中にはカルテの開示に慎重な意見もあります。それはカルテを不用意に 患者さんに見せると、例えば本人には伏せていた病状(ガン、精神病など)などが明ら かになり、診療上、かえって混乱を招くかも知れないという心配からです。そして、こ ういう事態が生じる根本的な理由はカルテは本来、診療の記録であって患者さんに説明 するために書かれた文書ではないという事にあります。だから筆者も『医者がカルテを 見せないのはとにかく悪い』という一部の単純な意見には疑問を感じています。
 しかしこれらの問題点があっても、患者さんが病院のカルテを見て自分自身の問題を 認識する努力をするのは素晴らしい事であり有用だと思います。ですから、ご希望の方 は遠慮せずに申し出て下さい。またコピーも差し上げます。

*血圧の自己測定
 現在の家庭用血圧計はずいぶん正確です。これを自分の健康管理に利用しましょう。
 毎日3回くらい測ると理想的で素晴らしいのですが、実用的には欲張らずに週に1〜 2回だけ曜日も時間も決めずに測ります。週に1〜2回だけ、その代わり必ず日付や時 刻も記録します。そうすると1カ月で4〜8回、1年では50〜100回分の記録が出 来上がります。その記録を見れば、あなたの血圧は何曜日に高いのか、何時ごろ高いの か傾向が分かります。
 自分の血圧計が正しく働いているか気になる人は、いちど血圧計をクリニックに持参 して下さい。そして医院の血圧計と比較してみればよいのです。なお血圧計は腕で測る 方式の方が誤差が少ないそうです。また機種による価格の差は、主としてメモリー機能 やプリンターの有無によるむので基本性能は同じです。

*医者にかかる10箇条(厚生省研究班)
 @伝えたいことはメモして準備
 A対話の始まりはあいさつから
 Bよりよい関係づくりはあなたにも責任が
 C自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
 Dこれからの見通しを聞きましょう
 Eその後の変化も伝える努力を
 F大事な事はメモをとって確認
 G納得できないときは何度でも質問を
 H治療効果を上げるために、お互いに理解が必要
 Iよく相談して治療方法を決めましょう