第28回 ピロリ菌の除菌治療


 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は1983年に発見された細菌で、現在では胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因菌と考えられています。この菌は胃十二指腸粘膜に潜んでいて、胃中の尿素を取り込んで二酸化炭素とアンモニアを生産します。このアンモニアのために粘膜がただれ、そこに胃酸の刺激で潰瘍ができる、と云われています。
 1995年頃から欧米では潰瘍の治療では除菌治療(菌を除く治療)が標準になりました。わが国でも2000年11月ようやく厚生省が認可しました。

 長期間にわたって潰瘍が治らなかったり、再発を繰り返している患者さんには積極的に試してみる価値があると思います。


 @始めに胃カメラで潰瘍および菌の状態をチェックします。潰瘍があれば、粘膜からサンプルを取り CLO 試薬に浸けます。 CLO 試薬はピロリ菌がいますと、そのアンモニアに反応して赤く変化します。この検査でピロリ菌陽性なら除菌治療をスタートします。

 A除菌治療:普通の潰瘍治療薬の他に2種類の抗生剤を服用します。1週間です。抗生剤はカゼなどで普通に使われるものですが、この治療法では長期大量になります。

 B引き続き5週間、普通の潰瘍治療をします。

 Cつぎに尿素呼気試験をします。これは試薬を服用後に呼気をビニール袋に採取し、ピロリ菌の反応をチェックするものです。これで除菌が成功したか否かが分かります。

 Dさらに1ヶ月普通の治療をします。

 E2回目の胃カメラをします。除菌が成功した場合はこれですべて終了です。


 費用について
 健康保険が有効です。2割負担の患者さんの場合、窓口支払金は
@1回目の胃カメラの時、クリニックで4000円あまり、薬局で2000円くらい、
A尿素呼気試験の時、クリニックで2000円くらい、
B2回目の胃カメラの時、3000円くらいです。
*追加検査や治療薬がある場合は加算されます。

 除菌治療に伴う問題点
 現時点で除菌治療に伴う問題点として以下の3点がはっきりしています。
 @大量の抗生剤を使いますのでたいてい腸炎(下痢、腹部膨満感など)がおこります。
しかし一旦、治療開始した以上は、きちんと1週間服薬する必要があります。また特殊体質の人(例えばペニシリン・アレルギー)には投薬出来ません。
 Aこの治療法の有効率は80%程度で、すべてのケースに有効な訳ではありません。
 B除菌後の逆流性食道炎
 成功したケースのうち約1割で逆流性食道炎が生じます。そしてこの食道炎のために継続的な服薬を要する場合もあります。

 その他の問題点は、今後この治療が国内で多数行われるにつれ数年で明らかになるでしょう。ですから、潰瘍がしつこくないケースや本人が積極的に希望しないケースでは、あわててこの治療に入る必要はないと筆者は考えています。