第3回 大腸ガンが増えている


(1)大腸ガンが増えている
 厚生省の統計によると昭和25年から平成元年までの39年間に大腸ガン死亡者は約6.3倍増えました。これに対して胃ガンは約1.5倍の増加にとどまっています。今後注目される病気のひとつとして大腸ガンがまっさきにあげられるゆえんです。原因として食生活の欧米化が大きく関係していると考えられています。

(2)大腸の構造(右図)
 大腸は長さ約1.2メートル、太さ8センチメートルの中空の臓器です。小腸に続いてお腹の右下部から始まり上にのびて右上部、次に横にのびて左上部、今度は下に向かって左下部、そのあとは蛇行して最後は肛門に続いています。それぞれの部分を盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸と呼びます。こうしてお腹の中をぐるりと大きくひと回りしています。
 その働きは小腸で栄養を吸収された食物のカスから水分を吸収して大便を作ることです。

(3)大腸ガンとは(右図)
 大腸の内側に出来る悪性のおでき、(腫瘍)です。始めは小さいのですが、何年間かの内に次第に大きくなります。大きくなると腸の内側をふさいだり、出血したりして症状がでます。さらに肝臓や肺に転移して全身に広がります。そして命を奪ってしまいます。
 大腸ガンは肛門に近いところにできやすく、全大腸ガンの約80%は肛門から50センチメートル以内(直腸およびS状結腸)にできると言われています。

(4)大腸ポリープとの関係
 大腸ガンはポリープと呼ばれる良性のおできと関係が深くポリープの内、20個に1個は将来ガンになると言われています。ですからポリープのうちに見つけて内視鏡を使って焼き切ってしまうことが早期治療にになります。小さいポリープなら外来で十分安全に治療できます(当院で可能です)。

(5)大腸ガンになりやすい人
 家族歴といって1親等以内に大腸ガンの患者さんがいる場合は要注意です。また始めに書いたように食生活との関係も注目されています。肉食が多くて野菜の少ない人は要注意です。

(6)大腸ガンの検査法
(1)検便:ポリープでもガンでもある程度の大きさになると出血します。肉眼で見て分からない出血でも検査をすると分かることがあります。この方法は確実性では劣りますが、まったく苦痛を伴わない検査なのでどうもなくても半年に1回位定期的に受けられると良いと思います。
(2)レントゲン検査:肛門からバリウムを注入してレントゲン撮影をします。とても小さなガンは写らないこともありますが、臨床的に問題になる病変はまず写ります。
(3)内視鏡検査:肛門から内視鏡を入れて腸の内側を直接観察します。この方法は小さな病変でも見つかるすぐれたものです。またガン好発部の50センチまでの観察は実に簡単で苦痛も軽い検査です。しかし大腸の一番奥まで検査するのはかなりの苦痛を伴います。

(7)レントゲンと内視鏡の併用方
 検査の方法は以上の様に色々ですが、医者は患者さんの状態からこれらを組み合わせて使い分けます。普通は症状、家族歴、検便をまず見ます。そして必要に応じてレントゲンや内視鏡をします。標準的な方法は肛門から約50センチまでを内視鏡で見て、それより奥はレントゲンで観察します。これを併用法と言います。この方法は確率の高い50センチまでを内視鏡で観察し、それより奥は比較的楽なレントゲンで観察するという考えです。
 福岡県集団検診協議会は大腸ガン精密検査医療機関として、国公立病院や当院を含めて市内で約50の施設を登録しています。登録の条件はこの併用方が必要に応じていつでも(毎日)可能であるということです。腸の事が気になる方はどうぞお気軽にご相談下さい。