気象ことわざの科学
〜ことわざの科学(橋本尚)講談社、BULE BACKS

ナマズガ騒ぐと地震が起きる

 安政や関東大地震の前に,ナマズが水面に飛び跳ねたり、異常に獲れたという記録がある。
 地震が発生する直前に、地核の中がひび割れ、電気が起きる。ナマズの体の側面には人間には感知できない微弱な電圧をキャッチする高感度のセンサーがあり、電圧の異常をとらえ騒ぐという説がある。
 実験室の水槽にナマズを入れ、日に何回かノックすると、敏感な時とそうでない時があることがわかった。ナマズが敏感な時,後、必ず地震計に感ずる地震がある。ノックに対して反応を示さない場合は、何らの地震も起こらないことが確かめられている。いずれにしても、決定的な相関の結論は得ていない。

朝雨は女の腕まくり

 女が腕まくりして力んで見せても、恐ろしくはない。朝降る雨もそのように激しくないので恐れるに足りない。現代では女が強くなった故か、必ずしも当てはまらない。

夕焼けは晴れ、朝焼けは雨

 地平線に近い朝夕の太陽は、厚い空気の層を通過してくるため、波長が短い青色の光は空気に散乱してしまい、人の目には、波長の長い赤い光だけが見える。それは、空気中の水蒸気が少ないほど赤く美しく見える。
 日本の天候は西から東にかけて変化する。雨をもたらす低気圧は2〜3日で移動することが多い。「西の夕焼けは水蒸気のない低気圧が去り、晴れてくる状態を現し、東の朝焼けは好天の状態が、既に東に去り、そろそろ、西の方から低気圧が近づき、まもなく雨が振り出す状態を示唆している」というもの。
 実際に的中率を調べると60%と低い。しかし専門家に言わせると、夕焼けや朝焼けのときの、浮かんでいる雲や大気の状態を観察して判断すれば。的中率は上がるという。例えば、夕焼のとき"巻雲"(すじ雲、きぬ雲)が浮かんでいれば、90%の確率で好天ところが空に雲が多く、空気が湿気でよどんでいるときは、低気圧が西から近づいている証拠なので、翌日は雨。

山にかさ雲がかかれば雨

 山の頂上近くに,カサをかぶっているように雲がかかるのは、すでに低気圧が近づき、上層の風がヤヤ強くなり、湿った空気が上昇しているときで、やがて天気はくずれる。

日がさ、月がさが出ると雨

 低気圧の前面や側面に現れる巻層雲のあるとき見られる現象、やがて雨
 的中率は60%。しかし専門家は、「日がさ、月がさが現れ、低いところに浮かぶ雲が出現し、その雲が南寄りの空から北寄りの方向に流れていくときは、雨の兆し」として、低い雲の動きを注意して判断すれば、このことわざの的中率は90%に高まるという

煙が東にたなびけば晴れ、西にたなびけば雨

 地形の影響で告知の風が東西に吹くとは限らないので、信頼性は薄い。
但し、春や秋に「煙が真っ直ぐ立ち昇ると晴れ」は当たっているらしい。
 これは大陸からの移動性高気圧にすっぽりおおわれるからで、好天の確率は75%、しかし、冬、西高東低型の気圧配置のときは反対の結果にになる。
 冬に煙が真っ直ぐ昇るのは、西高東低の気圧配置がくずれ、北西の季節風が止んだとき、日本海側では晴れるが、太平洋側では天気は下り坂になり、やがて雨が降り出す。

雷が鳴れば梅雨が明ける

 あまり当てにならない。梅雨の期間でも、梅雨前線が日本列島から離れるときがあり、天気が良くなり、日差しが強くなるため、各地で雷が発生する。また、梅雨の最盛期に梅雨前線が発達すると「全線雷」と呼ばれる雷が発生し集中豪雨をもたらす。雷が鳴ったからといって梅雨が明けたからとはならない。

夜目、遠目、笠のうち〜女性を美しく見せる三大条件

 「女性を夜、見たり、かぶっている笠のふちの下からちらりと見ると、実際よりきれいに見える」 西洋のことわざ「ランプの光で見ると、どんな娘も美しく見える」
 夜、暗いところでは眼の瞳孔が開く。カメラのレンズを開放したとき同様、肌のシミや荒れ、顔の細かい造作は見えず、ベールをかけたようなムードの美人顔に見える。
 明るい光の中でくっきりと相手の顔が見えるより、少しぼんやり見える方がムードがある。高級レストランでは、蛍光灯を使わずに、電気やローソクを使うのはその故。電気やローソクは女性の肌の色を美しく見せる。
「女性も、リンネル地も、ローソクの下では選ぶな」「見合いは夜するものではない」ということわざは正しい。


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