頭の良い馬は走らない

 関西の某競馬場で某調教師の話  「あの馬はあかん。頭が良すぎて走らへん。頭がええと何事も必死になりよらん。戦況を自分勝手に判断してもうて

 "ああ今日はあかん、どない頑張ったかてどだい無理や、勝たれへん"とおもうたら、レースを途中で投げてしまいよる。重賞レースかて十分勝てる素質もっとんのに惜しい話や。まあ考えりゃ人間も一緒やな。賢い奴はダメモトなんちゅうアホな努力せーへんもんな。きょうび、そんなんが仰山いよる。そやさかい、世の中、いまいち活力でーへん。おもろないな。

 え?馬どないするてか?それがなんぎや。馬一頭持つと結構、銭かかる。預託料や調教料、出走料など、勝って賞金稼いでもらわな引き合わん。ところがこの馬、時々、等に入って自分の食い扶持くらい稼ぎよる。"わしはただ飯食うとらんで、文句あるんか"ちゅうなもんや。こ面にくいやっちゃ。そいでも一度きりやけど、大きなレースで優勝したこともある。

 このときは傑作やったな。あんまり勝てへんので、馬の前で馬主さんと冗談ゆうたんや、"もうあかんさかいたこう売れる今のうち肉(馬肉)にしまひょう"か、ゆうてな。そのつぎのレースに優勝しよった。馬も肉にされたらワヤヤと必死になりよったんやな。ぶっちぎりや、ほんまやで。そやけどこれ一回きり、この後、ゆうてみたけど効き目あれへん。馬の奴"なにぬかしとるんや、そんな馬騙しの脅しにのるかいや"てなもんや、そっぽむいとる。見透かしとるんや。"馬の耳に念仏"ちゅうのはこのことやな。

 まあしゃないな、このまましばらく走らせて引退、後はメスに囲まれて優雅な種馬生活、なんせ素質はあるさかいな。ええ"人"やない"馬生"やで。ほんまに賢いと得や。


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