通、粋、意気地、やぼ

「昔から"通"って言葉がある。人情の機微に通じることを"訳知り"遊里の風俗、教養に通じることを"穴知り"両方兼ね備えたものを"通"
 穴知りだが、訳知りでないものが"半可通"、官僚が典型的だな。知識はあるが人情の機微を知らない。近頃こう言う輩が増えた。どっちもないのが"やぼ"
 "通"には洗練された色気の"粋"と強い"意気地"が含まれる。江戸時代から培われた日本人の"美的生活理念"だったが、今や"死語"だな!」
「通人は"遊び人"世の中ギスギスして遊びがなくなり"通人"がいなくなった。人を楽しませ遊ばせることが出来る人が本当の遊び人、遊びとは無駄なもの、どぶに金を捨てるようなもの。少しでも見返りを期待すればそれは遊びでなく"取引"だよ」
「お前も銀座じゃずいぶん金捨てたモンな」
「お互い様だぜ。しかし俺は悟ったね。色町は遊びに行くとこじゃなくって遊ばせに行くとこだって.よく愚痴る奴がいるだろう。"高い金ばっかし取りやがって少しもサービスしねえ"て、これは"やぼ"だな。遊びに行ってんじゃなくって、遊ばさせてもらってんだから」
「そのとおり、金を使って、人を遊ばせ、喜ばせる無償の行為。金はお布施、これは一種の"修行"だよ」
"無償の供与で無常の愛を知るか?"まさに"無常"だな。"愛は無常""金の切れ目が縁の切れ目"っていうからな
 昔から言うだろう。"色で仕上げたこの身体"てっね。色町には人生のいろんなモンがつまってんだ。人間修行にはもってこいの場所だな。
 どうだい、こうして折角3人が集まったんだから酒でも飲みながら、めいめい、何か面白そうな話をしようじゃないか」
「落語の"浮世床"か?噺が肴だな」


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