趣味と道楽の違い

江戸の道楽(杉浦日向子)

 趣味と道楽の違い
  趣味は実益を兼ねることもあるが、道楽は益がない。趣味はアマチュアリズム、道楽はのめりこみ、家財や命を賭する。趣味は日々の生活に彩りや潤いを与え、他を楽しませる。 道楽は常に暮らしを脅かし、おおむね周りを悩ませる。  趣味は趣の味わいを共有することに喜びを倍加させコミュニケーションの手段となる履歴書に趣味の項があり初対面の話題になる。趣味は万人に無害、道楽は個人の趣向、趣味は片手間、道楽は全精力。

 寸言
  考えてみれば、俺には趣味も道楽というほどのものはないが、結構楽しくやっているよ。


 辰巳風、芸者
 最近は芸者遊びなどする人は少なくなったが、今でも“辰巳芸者”の名前と意気、気っ風は健在であるある。 辰巳芸者は気性が激しく、お上品ぶらず全体に威勢がいい。辰巳とは南東の意味、日本橋の南東に位置したこと、深川遊里の特徴は吉原が女郎の町であったのに対して、芸者が中心。  辰巳芸者は昔男しか着なかった羽織を着て客席に出たところから<羽織芸者>という異称があった。 男名を名乗るのも辰巳芸者が始めたこと<>と呼ばれ、独特の気風を誇っていた。その独特の言葉の一部は、後に日本語の共通語化さえなった。{何々ですね}{ですわ}という言葉は辰巳芸者に始まり、それが花柳界全体に広がってやがて標準語化した。  {何々です}女言葉の典型、}{です}は江戸では花柳界の人間しか使わなかった。そこで遊んだ薩長の武士が江戸の標準語と勘違いして日本全国に広まった。  {ですわ}は芸者用語が明治期の女学生当たりに広まり、とうとう日本の女言葉の代表語尾になってしまった。

 寸言
   粋、立て引き、意地、義理人情、今や日本人の心の中では、死語に等しい言葉が、かっては道楽の神髄。




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