四割打者消滅の謎 〜本読書遊記 向井敏〜 生物学エッセイ集"フラミンゴの微笑"(ジェーイグルード)でアメリカ大リーグでの四割打者の消滅の原因を論じた。 グルードの調査によると、1901年〜1930年まで、大リーグ首位打者の打率が四割を越えるのはさして珍しくなかった。延べ9人の打者(タイカップ、ジョーシャクリンなど)が四割を打った。 しかし、 1930年 ナショナルリーグ ビル.テリ 4割1厘・1941年 アメリカンリーグ テッド ウィリアムス 4割6厘 を最後に四割打者は跡をたった。それどころか、3割8分を維持することさえ至難の技。1942 年〜今日まで、3割8分以上の打率を記録した打者は3人しかいない。 その理由を野球評論家はリリーフ投手制の導入,試合日程の過密化などに求めたが、グルードは"四割打 者時代でも、今日でもリーグ平均打率はほとんど変わっていない""最高打率の低下と平行して最低打率が上昇している"こと、つまり、最高と最低の両極端の打率が時代と共にリーグ平均打率に収斂してきていることを克明に調べあげたうえ 四割打者消滅は"生物進化の過程における変異の減少とりわけ極端な例の消滅と同じ原理によるものである"ことを論証した。 「自然界ではある体系が生じると、まずあらゆる可能性の限界がさぐられる。多くの変異はうまくいかず、最良の解決が出現し、体系の秩序が整って行くと共に、変異の勢いは衰え減少する」これと同じく 「野球もまだ若かったときにはプレイのスタイルがさほど整っていなかったので、最高の選手のとんでもない活躍ができた」 「選手たちが守備、投球、打撃の最良の方法を身につけて野球と言うゲーム全体の水準がより高度により標準化されてくるにつれて"変異の幅が減少"し,その結果、四割打者の消滅を招くことになった」 いわば"成熟社会の平準化現象"ともいえるが、この中で抜きん出るにはパラダイムの転換 を図り、独創的な創意、工夫が必要。 1 アメリカ、古代生物学、現代新化論分野の権威、彼の生物学エッセイ集 2 "範列"同時代に共通して用いられている思考パターンの転換のこと < ききみみずく >
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