森林生態学(四手井 綱英)

 森林伐採、破壊が地球的規模で行われていることに関して 

「森の木や草がどれだけ水と空気を吸い、光合成をおこなって、どれほど、有機物や酸素をだすか、科学的に調べるてみると、保水力酸素供給力は云われるほどではないらしい。
 酸素についてみれば、光合成で炭酸ガスを吸って酸素を出す時に、動物と同じように、呼吸作用で酸素を吸って炭酸ガスを出しているからプラスマイナスするとたいしたことにならない。
 ではなぜ、森林が大切なのか?
 「大事なことは炭素を貯蔵すると云うこと、地球の陸地の30%が森、そのが固定し保有している炭素量は空気中の炭素の量と等しく、また林地の腐植に含まれる炭素の量も同量である。つまり、空気中の炭素の2倍を森林で蓄えられている。森林が消えるとそこに貯蔵されていた炭素は回り回って最後には炭酸ガスとして空気中に放出、地球は息苦しくなる」

割り箸は森林保護に役立っている?
「炭酸ガスをより吸収するのは成長が止まった木の多い自然林ではなく、伐っては植えている人工林
 乾燥木材の質量の半分は炭素。それは、自然林より人工林の木の方が大きい。若い人工林が大量の炭素を吸収し、固定した結果である。

 したがっ、伐採後に植林すれば炭素の吸収がどんどん進む。伐った木も住宅や家具などに使えば、壊して燃やすまでは炭酸ガスを発散せずに炭素の形で溜めこんでいる。
 都市は木造住宅や家具の形で炭素を貯蔵している。これを都市の森林と呼ぶ。
地球温暖化防止、炭酸ガス排出量の規制が世界的に厳しく云われている今日、木造住宅や家具は一助となる。その寿命を延ばす工夫が大切。立て替え時に、廃材を燃やさず何かに利用する技術開発が急がれる。
逆説的だが、森林伐採はむしろ炭酸ガスの吸収や固定に役立っている。
 一時期、割り箸が木の無駄使いだとやり玉に挙げられたが、割り箸の材料は木の成長を促進するために間引いたときに出る間接材で、むしろ森林保護に役立つことが見直された。
 勿論、森林伐採ははそこに住む動物の生存を脅かす。伐採後に植林が共はないと砂漠化し、炭酸ガスの保有どころではなくなる。
 日本は木材の輸入大国だが、輸入先の現地で植林に協力する日本企業や民間ボランティアも急増している」


室生寺五重塔 千二百年の生命
        (松田敏行 詳伝社)日経書評、森谷正規評抜粋
日本の木造建築は千二百年、千三百年も風雪に耐えているが現代のコンクリート建築は百年も持たない。現代技術の産物は、永続性において千年前の技術にはるかに劣る。
 平成十年の九月に台風で杉の大木が倒れかかって室生寺五重塔が無惨にも損傷された。それを保存修理したのが、奈良県に勤めて四十年も文化財修理をしてきた松田さん。
この五重塔は高さが十六・一メートルの小さく可憐な搭、法隆寺五重塔の半分
 木造建築物の保存修理は大事業だが、その丹精込めた修理によって、さらに千年も持たせることが出来る。
 五重塔は、日本が世界に誇れる素晴らしい建物である。重要文化財になっているものは全国で二十五基、そのうち十一基が国宝である。どれも千年ほども生き抜いている。五重塔に焼失はあるが、地震や台風で倒れたものはないという。  もっとも、数百年に一度の解体修理は行っている。室生寺五重塔も創建以来二度の修理なされているが今でも創建当時の部品が多く残っていて、十分再利用できたという。  解体して大半の部品を再利用できるのは、木造建築であり、“木組み”で建てているからだ。
和釘も使うが、基本は木を組み合わせている構造であり、痛んだ部材だけ取り替えればいいのである。
 コンクリート建築ではそうはいかない。古来の木造建築は資源を大切にし、廃材を出さず二十一世紀に理想的な建物なのである」

寸評 世界に冠たり、日本の木造建築と技術こそ「森林再生、資源保護、地球温暖化対応」の決め手として世界中で研究されるべきである。


< ききみみずく >