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迷犬の遠吠え 飼犬やってんのも楽やないな!! うちのオッサン、近頃、文句が多いねん。定年で、毎日家でゴロゴロしとんのやけど、母ちゃんにも子供にも相手にしてもらえへんので、俺に八つ当たりしよるんや!
俺の好きなチーズの匂いがするんで薄目をあけると、無精ひげいっぱいの汚いオッさんの顔がクローズアップしとる。オッさんの臭いや!! オッさん臭いねん。 ナポレオンもチーズとジョセフィンのあそこの匂いと間違うて“朕?チン?は疲れておる。もう結構”と云うたそうやけど、贅沢な話や。それにひき換え、オッさんの臭いはたまりまへん!!! オッさん、俺に言いよった。“お前は情けない犬やな、俺が近づいてんのに側までこんと目を覚まさへん。それでも犬か!! 近頃、番犬が、泥棒に盗まれる、という話をきくが、嘘やろ思うとったが、ほんまやな!お前もそのくちや” おいおいオッさんそれは違うで。盗まれた犬のことは知らんけど、俺かて番犬の端くれや、それぐらいは自覚しているで。夜は寝ていてもちゃんと神経研ぎ澄ましとる。犬は夜が命や!こないだも庭に入ってきた、どまぐれ狸に吠えかかり、撃退したやないか。 もっとも、あの時、何事やならんと飛び起きたオッさん怒とったな。“狸と泥棒の区別ぐらいできんのか!!人騒がせな駄目犬め” そんなむちゃいうたらかなわで。パタ−ン認識するロボット犬じゃあるまいし、それができるぐらいなら生身の犬やっとらん。俺の仕事は、怪しいもんが夜、侵入してきたら吠えるだけや、 その後はどうするか、オッさんら人間の仕事やないんか? 夜は俺かて緊張しとる。闇のけはいにおびえる孤独な犬や、熟睡はできん、そやさかい、昼は寝とるんや。夜も昼も働いてみい、過労死やで!!労働基準法違反で訴えられるで、ぺット虐待で逮捕されるで!! と云いたかったが、どうせ犬の言葉も理解できん無教養な奴や、ゆうても無駄や!!上目使いにオッさんの顔みてから、そっぽを向いてやった。オッさんの口も臭かったしな。 ところがオッさん、なに勘違いしたのか、“そうか!やっぱしお前、恥ずかしいんか?お前も恥は知ってたんやな。 そらそうや、お前は由緒ただしい血統書付きの犬やからな。お前の父親は英国の貴族に飼われていた猟犬で、全英鳥猟コンクールで優秀な成績やったと聞く。 母親の方かて負けてへん。全日コンクールで数多の日本犬を抑えて優勝しおった。そのとき、日本犬の飼い主達が、“なんで洋犬ごときに負けるんや!!”ゆうて怒りだして大騒ぎになり、ついにナショナリズムが蘇り、今後、この大会に洋犬は参加させへんと決議しよった。 グローバル・スタンダード時代を逆行さす活躍した犬や。そんな偉大な両親の血ひいとるお前のことや、そろそろ目覚めても、ええ頃やと思うていた” 考えてみれば、お前も不憫なやっちゃな!世が世なら、鳥追い犬のエリートとして野山を駆けめぐているはずやった。それが、どうどまぐれたか、家のおばはんに貰われたばっかりに、庭犬に堕ちて、こんな坪庭につながれる羽目になった。 よっしゃ!!わかった。今からでも遅ない。人間でも犬でも志を捨て、諦めたらあかん。もう一度お前を訓練して、一流とはいわんでも、猟犬の熱き魂を復活させ、生き甲斐を持たせてやる。幸い、定年で俺は暇になった。時間はたっぷりある。じっくり教えたるからまかしときや” おいおい!!おさん!待ったれや。なにいちびとんね。俺は猟犬なんか、なりとうない!! 母親が、かねてから云うとった“猟犬はつまらんで!訓練は地獄や。毎日、獲物を追いかけて野山を走り回わらされる。 獲物を捕っても、みんな飼い主の自慢の種や。もし獲らなんでみい、あほ!ぼけ!かす!云うて罵倒される。それに、野山は危険がいっぱいや、蝮も、スズメバチやヤブ蚊もいる。 わても、以前、蝮にかまれたことがある。そしたら、飼い主は同情するどころか「猟犬のくせにドジなやっちゃな。もうお前も年やな、そろそろ引退するか?」恐ろしいことを云わはった!!!” “なんやて?引退後は、悠々自適の生活やてか?そんな競馬の種馬みたいな甘いもんやない。 この間、飼い主が珍しくわてに、テレビ見したるいうて座敷に上げてくれた。ちょうど、サド侯爵を崇める末裔どもが「狐狩り」を楽しんでいる番組をやっとった。 吃驚!!したんは、その中で、年とって、走れんようになった猟犬が殺されたことや。イギリスでは猟犬の引退は、即、死や!!引退したら薬殺されるんや!!!” 飼主がニヤニヤ笑いながらわてに云うた。“よう見ときや、イギリスの猟犬はああいう目に遭うんやで、その点、日本ではそこまではいかへん。猟犬天国や、感謝せなあかんで。そのお返しに、もっと気張って鳥捕りや” “これ云うためにテレビ見せたんや。そのときわては覚悟を決した。わての余生は決して安穏やない。まあ、殺されんまでも粗末に扱われることは間違いない。猟犬のさだめや!!! そやから、お前は猟犬だけにはなりなや”さめざめと泣いた。 俺は考えた。どないしたら猟犬にならんですむのか?そろそろ猟犬の訓練も始まる。嫌やゆうて、さぼるわけにいかん。そないなことをしてみい、捨てられるか消されるかがおちや。とゆうて、優秀な猟犬の遺伝子を持つ俺や、訓練されんでも、母親の仕草を見ていて、だいたい飲み込んどる、猟犬の仕事なんぞはお茶の子や。 そやけど、そないなとこ見せてみい、百年目や!! 飼い主は狂喜して、世界チャンピオン大会に出場を企む。ええ成績やったら高う売れるさかいな。 ノルマをこさえて、こき使う。果ては、種犬にされて好きでもない雌犬をあてがわれ励まんといかん羽目になる。 とつおい思案して、夜も寝んと泣いっとたら。飼主にうるさい!!いうて、外へほりだされた。 そんな時や、飼主の妹が家に来た。飼っていた犬がハヤリヤマイ死んだんで、代わりの犬を探しているとゆうて涙混じりで話ていた。 ここだけの話やけどな、若い綺麗なおなごの涙は風情があるが、太った大年増の涙なんぞかわいげないな。 しかし、このオバハン、噂によると、無類の犬好きで猫かわいがりに??犬を可愛がるらしい。なんでも亭主が浮気したとき、フラストレーション解消のため飼いはじめ、それ以来、夜も犬を側に置いて、亭主を寄せ付けんらしい。 チャンスや!! 俺はオバハンとこへ、しっぽを振りながら、ちょこちょことかわいらしげに駆け寄り、青筋と皺だらけの手の甲を嘗めた。それから少し小首をかしげ、オバハンのドングリ眼をじっと見つめた。 イチコロや、“マアかわいい!!ねえお兄ちゃん、この犬、頂戴。一期一会や、巡り会いや、私、ビビットきたわ!!” 実は、この兄貴、小さい頃から気の強い妹に頭があがらへん。 兄貴のもんでも、自分が欲しいと思うたら、何でも取り上げよった。 今でも兄貴には、忘れられん悔しい思いで?がある。 お八つに到来物の“どら焼き”がでた。兄貴の一番の好物や。しかし、貧しさは質実剛健の証や、と親父がうそぶいている家では、めったにお目にかかれへん貴重品や。 “どら焼きはん久し振りでんな!!よう来てくれはりましたな!! ふっくら焼き上がって、ええ色艶してはるな!お元気そうでなによりや。あんこもようけ入っていて、柔らこうて美味しそうな!!” 兄貴はいつも、おいしもんはいきなりかぶりつかず、先ず目を楽しませて、あれこれ美味しさを空想してから、おもむろに食べることを嗜みにしている。これが、一個で二個美味しいという楽しみや。 今日も盆の上のどら焼きをウットリと見つめていた。 そしたら、スット蜘蛛のような黒い手が伸び、大切などら焼きを掴んだ。いつの間にか、自分の分を食べ終えた妹が側に来て、兄貴の分にちょっかいだしたんや。 “何すんのや!!これは俺のどら焼やないか!!泥棒!!” “なんやて?泥棒やて?!何ゆうてうんの!!お兄ちゃんが辛気くさい顔して、いつまでもどら焼きを睨んでいるさかい、きっと怖いんやと思うて、目の前からどけたろう思うたんやないか、泥棒なんてあんまりや!!”妹、大声で泣き出した。 母親が顔出した。“うるさいな!!何泣いてんのや!!” “お兄ちゃんが自分のどらやき食べてしもうて、私のを取ろうとしはんのや!!!” 兄貴吃驚??!!☆☆☆ “チャウ、チャウ、逆や!!こいつが俺のを取ろうとしたんや!!!” 母親はため息をついた。 情けないな、お兄ちゃんのくせに、妹のをくすねようとするなんて。どら焼き一つで兄妹喧嘩するやなんて、これもお父ちゃんが、ど甲斐性なしやからや、毎日、買うて食べさしとったらこんなことになれへん” 父親、とんだトバッチリヤ。 母親、妹に“あんたは女ごや、女ごは優しいないとあかん。ええやないか、こんなしょうもないお兄ちゃんやけど男や、労って親やらなあかん、半分分けたり、それが女ごの母性というもんや、男を騙すええ武器になるで!!今から使い方を訓練しとくんや、ええ婿はん捕ること出きるで” 妹、まんまと兄貴のどら焼き、半分せしめよった。 兄貴は渋い顔しよった。犬の俺が、自分で云うのもなんやけど、俺、結構、高う売れるんや。しかし断ったら、何仕返しされるかわからへん。妹に対する恐怖はトラウマや結局、まんまと強奪された。 俺の方は思惑どおり、猟犬にならんで済んだ。それに、オバハンはどうゆうわけか、犬には優しい。 どだい女ちゅうもんは、支配力と独占力が強い。自分に忠実で尻尾を振ってくるもんに弱い。 俺に対するかわいがりようは、旦那が“せめてその百分の一でもこっちに回して貰いたい”とぼやくほどや。旦那には“捕った男に餌はやれんで”とうそぶく反面、俺には、ソフトタッチや。ただ、猫なで声の赤ちゃん言葉で話しかけてくるのは気色悪いが、のうのうと過ごせる毎日は悪うない。 そんなときや、豊かな午睡を楽しんでまどろんでいる俺に、オッさんのイチビリや! 俺はオバハンに助けて貰おうと家の中を見た。姿がない!!そうや、オバハンは留守や、オッサンをほったらかして、友達と外国旅行に行ったんや。半月は帰ってこん。オッさんはこの機会を狙ってたんや。大事にされる俺を妬んでの復讐や。 男の嫉妬ほど怖いもんはない。俺はゾートした。こんなんやったら動物ホテルにでも預けてもらいたかったが後の祭りや。 オッさん、眼をきょろきょろさせている俺の顔を見て嬉しそうに云った。 “悪いけどな頼りのオバハンおらへんで、わいはかねがね思とったんや。あの性悪女がお前を甘やかすさかい、根性なしの怠け犬になったんや。折角の血統が地に堕ちとる。情けない。ご先祖様に申し訳ない。わいが厳しく鍛えて根性を叩き直してやる” オッさん勘弁したれや。今時、「厳しく根性を鍛える」なんちゅうのは、はやらんで。 学校の先生やったら、躾は人権侵害や、憲法違反やいうてPTAがぎゃあぎゃあ騒ぎ、穏便を旨とする教育委員会で大問題になるで、 ペティジャ.スティ(ちっぽけな正義)こそ使命と燃えるマスコミもほっとかん。「反動!暴力教師現れる!!」とキャンペーン張られて追放や。 オッさんの演説は続く、“庭の隅にいる野良猫見てみい、凛としとるやろ!! あいつらは誰にも飼われとらん、自立している。ペットフードなんぞで飼われている柔な家猫とちゃうで、今時珍しく、ネズミを獲る特技の持ち主や。餌も住みかも自分で調達する。その代わり、自由や、嫌な上役に媚びる必要もない。羨ましい話や。 媚びず従わず、まさに荒野の一匹猫や。それに対してお前はどないや?飽衣飽食、のうのうと日々を暮らしとる。緊張感の一欠片もない♪♪。少しは野良猫を見習え!” おいおいオッさんそれはないやろ。ついこの間まで“庭の野良猫を追い出せ!!”いうてたやないか。そんで “おまえは犬やろ、犬ちゅもんはな、昔から猫と仲が悪いもんや、犬猫の仲と言うぐらいや。 犬は縄張り意識が強い、自分の縄張りには誰も侵入させへん。猫なんか入ってきてみい、追いかけ回してイチコロや、猫も怖がって側に近寄ってこん。
仲”ゆうんや、 そやけど、犬と猫の仲が悪いなんて、アホな人間の偏見や! だいたい動物ゆうもんは人間と違うて、民族主義なんか持ってない。よその種族がきてもめったに喧嘩なんかせえへん。 しゃくにさわった!!頭にきた!!何を偉そうに云うてんのや!!自分はどないや、凛としとるんか?会社でも嫁ハンにも頭があがらんやないか? 凛などという気高い言葉を口にする柄やない。言葉が汚される。こんなオッさんに云われたうない。 吠!!えたろか思うたが、俺もおとなの犬や、分別は持ち合わせている。こんなオッさんと言い争っても無駄やと我慢した。それよりオッさんをへこまかしてやる戦術を考えた方がいい。 訓練とやらが始まった。 犬の服従訓練、五大定番 ちゅうやつや。 “お手!”“お座り!”“伏せ!”“ちんちん”“お回り” あほか!!! 旧態依然、陳腐、仮にも俺は名門出の猟犬や、賢さは、犬仲間のエリートとの折り紙つきや。赤門かて怖うない。いつでも小便引っかけたる。 こんな俺に教えることか!!失礼な!!! だいいち、この家での序列を自覚してない。一番がオバハン、二番が俺、三番は子供の順や、オッさんは末席や!! なっんで末席のオッさんが二番の俺に偉そうに命令できるんや!!! おっさんが会社で出世できなんだ理由が解った、相手を観ない、気配りがない、状況判断が出来ない、創意工夫がなかったせいやと悟った。 噛んだろかと思うたが、止めた。今時のすぐきれる、畜生道に堕ちた、人間のアホ餓鬼と同じやと思われとうない。それに、もし噛みどころが悪うて死んだら、この家の収入は寡婦年金だけになり、半額になってしまう。オバハンがかわいそうや、俺の食事の質も落ちる。 歯をむいて唸るだけにした。 勘トロのおっさん“オッ!!歯を出したな、犬も笑うんか?そうか、嬉しいんやな” このオッさんの勘トロは絶望的や!! 俺は諦めた。“諦め”は“明らめ”ることや、物事を“理解”することや、“悟”ることや。 まあ、考えてみればこのオッさんも気の毒や!会社をリストラ同然に追い出され、家族にも軽蔑され、相手にされん。“私の人生暗かった!!” 宇多田ひかるのお母っあの嘆き節を絵に描いたような人生や。 人に対する思いやりは犬の方が優れている。アニマルセラピーでボケ老人がまた嫌な浮世へ戻ってきた話が多い。 もとも、浮世は憂き世、またすぐ逃避して、ボケに戻るらしいので、“治療せんで、そのまんまボケさしておいたほうが本人は幸せや”“ボケは神が人間に与えた最後の恩寵や。それに逆らうのは神を冒涜するものや”ともっともらしいことを言う輩がいる。 介護する苦労しらんやっちゃ、気楽なこというとる。 しかし、俺は今、流行の癒し系の犬を任じているので、オッさんの陳腐な服従訓練の定番をこなすことにした。少しでもオッさんの癒しになればと思ったからや。 ノープロブレム、易々とこなす俺にオッさん狂喜、そらそうやろう。今までの人生で自分のゆう事を聞いてくれた動物なんぞいなかったからな。 声をうわずらして再度命令した。ばかばかしいが、これもボラティアや、云うとおりにしてやった。 初めて知った権力の甘き陶酔、しかし、しつこい、FONT COLOR="BLUE">三回目の時は、さすがの俺も切れた。 一声吠え、寝そべり、それからはオッさんがいくら命令しても、上目使いで、アホ面にメンチをきってやった。 “なんや、もう疲れたんかいな?みてみい、普段から運動せんと、でれっと寝てるからそうなるんや、この間なんか、お前、カラスに尻尾の毛、抜かれとったやないか。ぎゃー!!いうから何事や、と見たら、2羽のカラスがお前の尻尾の毛くわえて屋根にとまとっる。お前も怒って吠えとったが、カラスは小馬鹿にして見下しとった。 あん時は、さすがにオバハンもあきれてゆうとったな。{あんた!!猟犬やないか!!それも由緒正しい鳥猟犬や、なんでカラス風情に尻尾の毛抜かれるんや、鳥の風上にもおけん犬やな!!} 無教養なオバハンや、一言いうても、さらけ出す。猟犬がなんで鳥の風上におるんや?猟犬は匂いに気づかれんように、獲物の風下から近づくんや、 突っ込み入れたろうとおもうたが、白でも黒と言い張る奴や、おのれの間違いに顔を赤らめる奴やない。あほらしいのでやめた” オッさん鬼の首とったように、いいよった。 腹立つが、あれは、確かに、俺の不覚やった。カラスが自分の巣作りのため、俺の尻尾の毛狙っていたのは、気づいとった。そやから近づいたら、一気に捕まえたろうと寝たふりしてたんや。ところがカラスは悪賢い。 あの2羽は夫婦もんや、愛の巣作りは盲目や、危険を顧みず、悪知恵を働かす。 雄の方が俺の頭の方に近づき、“カー”と鳴いた。来たな!!全神経を集中する。 一瞬飛びかかろうとしたとき。尻尾が引っ張られ、気をとられ、タイミングが外れた。いつの間にか雌の方が後ろに回り。俺の尻尾の毛をくわえていた。 俺はかまわず雄に飛びかかると反動で毛は抜けた。雄の方ははちゃんと間合いを測っていたんやな。とどかず逃げられた。まんまと陽動作戦に引っかかった。 本当に2鳥を追うもの1鳥もえずや!! 俺は決心した!!! 嫌な訓練から逃れ、弱いものいじめのオッさんに復讐するには“ハンスト”をする。オッさんのくれる餌はいっさい食べない。 オッさん慌てるやろな。なにしろオバハンの大切な愛犬が留守中に拒食症になったんやからな。オッさんの責任や。 確か、あと三日すれば、オバハンが帰ってくるはずや、それまでの我慢や オバハンの前で俺は息絶え絶え、ぐったりとしてみせる。そして、オバハンの差し出す餌をガツガツ食う。腹すかせ、衰えた俺を見てオバハンの怒りは爆発する。あれほど頼んでおいたのに、飯も食わせずこのざまや!!!動物虐待や!!!刑事罰や!!! ひょっとすると離婚もあり得る。オバハン、オッさんの定年のとき、退職金を半分貰って離婚することを真剣に考えたんや。しかし退職金があまり安いので思いとどまった。 それより、年金とオバハンが今まで貯めていたへそくりで暮らした方が得やと考えたからや。 よし!!! 久し振りに俺の体は熱うなった。復讐や!!! そのまえに、腹ごしらえや、腹が減っては、戦は出けへん。当分食べられんからな。 俺はオッさんのくれた、俺の口にあわんドッグ・フードを我慢して食べ始めた このドッグ・フードはオッさんが買ってきた大安売りの安もんや、オバハンがいつもくれる高級品の半額や、それでもおっさん、こんな怠け犬に餌、食わすの惜しいとブツブツゆうとった。 しばらくの辛抱や、こんな餌でも、食えば都や?なんせ俺には大志がある。圧制者を倒す!!!明日がある!!! 俺は夢中で餌を腹に詰め込んでいた。そのとき、頭の上で七面鳥の悲鳴が聞こえた。 吃驚して頭を上げると、オバハンが立っていた。オバハンの声や。 “まあ!!あんた元気そうやな!食欲もりもりやないか!よかった! オッさん、あてが、きつうにいうたとおり、あんじょうあんたを可愛がってくれてたんやな。見直したわ。 わて、あんたが心配で、心配でならんかった。 それで、旅行の予定を早めて帰ってきたんや、なんせ、頼りないオッさんに預けたからな。あんたもオッさんを嫌っていたみたいやし。 オッさもやらないかんことは、ちゃんとやるいうことが解ったわ。これで安心したわ、これからはあんたを預けて、ちょくちょく旅行に行く、楽しみが出来たわ” なんと!!!やぶ蛇や!!!オッさんを見るとニャ二や笑っていた。 まあ、しゃない、今回は思惑はずれの負けや。“猿も木から落ちる。犬も歩けば電信柱にあたる”や。しかし、いつかきっとオッさんをこの家から追い出してみせる。臥薪嘗胆、犬の意地や!!!
< ききみみずく >
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