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炎天下、水郷霞が浦を走る −−トランスアメリカ・フットレース ステージ・ランに向けて−− |
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平成6年7月13日。東京で丸1日の余裕ができたので、霞ヶ浦を走ることにした。
日本から海宝さんが参加している世界最長のウルトラマラソン、トランスアメリカ・フットレースのステージ・ランニングツアーの第2陣に申し込んで、調整に励んでいる折り絶好のトレーニングである。
土浦から潮来まで
土浦から潮来までが47、8キロ。石岡から潮来までが約40キロ。
帰りの便は東京空港発20時丁度のANA。潮来を15時25分の快速に乗ればいい。
4時半に目覚めたので、支度をして5時10分、東京ホテル浦島を出る。
バスは、6時半が始発で間がありすぎる。東京駅までタクシーで行く。荷物を東京駅のコインロッカーに預けて、上野駅に向かう。
常磐線は、平行きの6時2分がある。駅員に「平って土浦の先ですか?」と聞いて笑われた。平は水戸のまだ先であった。
炎天下(毎日30度以上の真夏日が続いている)に50キロちかくを走る自信がなかったので切符は石岡まで買ったが、土浦に到着したのが7時13分。予定していた列車より約1時間も早く着いたので、1時間の余裕があれば、潮来発15時25分に間に合うだろうと考えて下車する。
土浦駅はかなり大きな駅舎であるが、東口には、殆ど店舗がなくタクシー乗り場がある程度である。
半袖のTシャツに短パン、リュックを背負って7時半にスタートする。
駅の側まで湖が来ているが、工事中で湖岸に沿っては行けそうにない。
北に向かって走ったら、どこで間違えたのか道は次第に細くなり、常磐線の土手の下を通る1車線になってしまった。通勤の車が延々とつながり走ることも出来なくなって線路の横を歩くはめになった。
国道354号線の跨線橋に登って、しばらく進み右手に分岐している県道に入ってほっとした時は8時になっていた。
鏡のような湖面
雑貨屋を見つけて、パンとジュースを買い、湖岸に道路があることを確認。
岸辺に出る。鏡のように静かな湖面には、浚渫船のような船が3隻浮いている。
振り返ると土浦市街のビル群が霞んでいる。対岸にも、建物が建ち並んでいる。
この辺りは、レンコンの産地とみえて一面蓮の畑である。白や淡い桃色の花が美しい。
朝飯抜きで1時間半走った空腹をパンで満たす。
ところどころに舟溜がある。糸を垂れている太公望もいる。
岸辺には、葦が生え野鳥の天国。さまざまな水鳥が、足音に驚いて飛び立つ。
沖の方に向かって、幅1メートル程の足場が伸び、先で熊手のように幾つも分岐してあちこちに小屋が乗っている。何だろう。網でも張って魚を獲る設備なんだろうか?
牛渡の舟溜で作業をしている人に聞いたら、鯉を養殖しているのだという。
小さな川があり湖岸の道は寸断されているので、川沿いに走って県道に戻る。
前方山の上に小さな天守閣らしき建物が見えたが何だろう。
国道354号に突き当たり右折して暫く行くと霞ヶ浦大橋に出た。
朱塗りの盛り上がりの少ない長い橋である。パノラマ写真を撮る。
端に距離標があり丁度1,000メートルあった。時間で6分25秒。
橋を渡ると玉造町。橋のたもとの左側に丸いタワーが聳えているのは、何かレジャー施設のようであった。
日本一の恋の里
湖岸を走りたかったが、既に11時ちかくになって腹ぺこの状態。国道に出れば店があるだろうと思い、国道355号線に出たが交差点の付近には何もなかった。
距離標識があり『佐原28キロ、麻生16キロ』とある。地図のコピーを広げて点検。麻生まで16キロなら、目標の潮来までは20数キロありそうだ。15時25分の快速に間に合うかどうか、いささか心配になる。
玉造町に入って、蓮の畑はなくなり、堀に噴水や水車のようなものが水を掻き回している。のぞいて見ると鯉の稚魚が寄っていた。
大きな邸宅の側にも、堀があり滝のように水を落としているところが多い。
『日本一恋の里』の看板をあちこちで見掛けたが、鯉の養殖で生産高が日本一ということらしい。鰻料理の看板も多かった。
左手に林が続き、平行して建物がたっているので行って見ると、旧355号線の町並みであった。小さなスーパーを見つけたが、菓子パン程度しかなく、食欲をそそるようなものがない。ヨーグルトとジュースを買って飲んだが渇きを癒すことができず、次の自動販売機で、またもジュースを買う。計4本のジュースを飲んだら幾らか元気になった。
ジュースの飲み過ぎ
旧道がバイパスと合流する船子で12時18分。今度は湖岸に移る。
広々とした湖面には、さざ波が立ち、葦の陰には真鴨が羽を休めている。長閑な風景である。
ジュースを飲み過ぎたせいか、腹の具合がおかしくなってきた。どこか適当なところはないかと、左右を物色していると、前方に公園らしきものが見えた。地図によると天王崎公園のようだ。地図に載るくらいの公園ならトイレ位あるだろうと堪えながら走る。
藁葺きの傘状の休憩所が散在し、海水浴場にもなっている。立派な建物があり、トイレとシャワー室が完備されていた。
用を足しすっきりしたところで13時30分。3時過ぎまでに潮来にたどりつけるかどうか。際どいところである。
湖岸を走っていると前方に車が横切っているのが見えた。霞ヶ浦の終端の川に掛かった橋らしい。いよいよ牛堀町だ。
空腹を通り越して背中と腹がくっつきそうになったが、脱水症状を起こしたらしく食欲は全然ない。ジュースとアイスクリームでエネルギーを僅かに補給しながら、10分走っては、電柱2本分を歩いたりを繰り返し、ひたすら頑張る。
川を横断して佐原に向かっている国道51号線と交差したところで14時10分。天王崎公園から40分を経過している。
ここから、今回の目標、JR潮来駅までと天王崎公園までと同じ位の距離。何とかなりそうである。歩きの時間が次第に長くなる。食料を補給し少し休憩すれば、元気も出るとは分かっていても、そんな時間の余裕もないし食欲もない。
乾杯のビールがない
料理屋が建ち並ぶ街の中をただただ、潮来の駅に向かう。
橋のたもとに座った、三度笠をかぶり紺の絣に赤い帯の女性が2人が「舟に乗らんの」と声をかかる。川をのぞきこむと屋形舟が数隻浮かんでいた。
「時間がないよ」「30分でいいがな、駅の前に付けるよ」
「快速に乗りたいので、またね。ところで駅はどこ?」
「そこを左に曲がったとこよ」「有り難う」
駅はすぐ側だった。15時00分。急いでカメラを取り出し表示を時間に切替えて最後の1枚で潮来駅を撮る。
目標完遂!!
「さあビールで乾杯だ」と駅の構内に入ったが、何と売店がない。外に売店らしきものがあったがシャッターが下りている。週末など観光客の多い時だけ開けるのだろうか。
がっかりしながら、駅の周囲を回ったらスーパーが見つかった。一抹の望みをつないで入ると、ありました。冷えたビールが!
ホームに上がって列車を待ちながらの乾杯!「うめー」
手には腕時計の跡がくっきり。足は靴下と短パンの間が真っ赤に焼けている。腿に濡れたタオルを載せるとひんやりと気持ちよい。
浜松駅の地下で、にぎり寿司を10こ食ってやっと生気を取り戻した。
トランスアメリカ・フットレースは、7月3日の段階で、14人中8人が早くもリタイアしたと聞いた。アメリカも暑いのだろうか。
海宝さん以下、まだ健在な選手は何とか最後まで頑張ってほしいものだ。