和歌山城〜高野山往復ウルトラマラソン完走記

平成6年10月23日(日)NO6009 福岡市 見野 容   


◆爆弾を抱えて

 数年前から狙っていた「和歌山城〜高野山往復ウルトラマラソン」に参加する機会を得 て勇躍、和歌山に乗り込んだ。
 10月23日午前4時、和歌山城追い回し門前を参加者(エントリー数は150名)の 約半分がスタートした。
 残りは5時の出発。脚に自信のある人は6時スタートでもよかったが果たして何人 いたやら。
 城を半周して一路東に向かう。
 列はたちまち伸びて、先頭グループを懸命に追ったが次第に離され一人ぼっちとなる。
 郊外に出ると、街の明かりはなくなり、オリオンの肩に乗った19夜の月の明かりが冴 え渡り、小さい星は姿を消し北斗七星など僅かな星が瞬いているだけである。
 20キロほど平地が続いたあと、黒川峠(330m)までの約10キロはかなりきつい 登り坂。途中、堀池さん(今年のゴールデンウィークに開催された『さくら道260Km ウルトラマラソン』を完走したあと、すぐ『山口100萩往還マラニック(250キロの 部)』に出場し見事完走した怪人)と抜きつ抜かれつする。
 峠を下りアップダウンを繰り返しながら、次は梨子の木峠(481m)までの急な登り 。途中何度も軟膏(筋肉消炎剤)を塗布しながら右膝の痛みを散らす。  10月は走り込み月間。上旬に185キロ、中旬は膝を痛めて87キロ。痛めた膝が回 復しないまま、本大会に参加したので爆弾を抱えて走っているようなものである。
 足先が痺れたような感覚になる。こんな症状は初めてのこと。シューズの中で指の運動 をしながら走っている間に平常に戻った。
◆味噌汁とお握り
 矢立では早くもトップが折り返してくる。2番手は5時にスタートした八重樫さん。凄 いもんです。何しろ彼は、さくら道ネイチュアーズ(250キロ)に出て見事完走した人 。 矢立から大門までの約8キロは、登り一方の狭い道。観光バスが離合するのに苦労し ていた。ランナーも側溝の蓋の上を走ったり、渋滞している車の間を縫ってひたすら大門 目指して登る。
 肩が凝ってきた。以前は腰や背中が痛くなったことがあるが、最近は肩が凝ることが多 い。肩を回したり上下に揺さぶったり、腕を振ったりしながら走る。

 大門の前を通過してぐるりと回り込んで裏(?)から、朱塗りの大きな門を潜って折り 返し点に到着。
 10時52分。きつい登り坂が多い55キロを7時間弱とは、まあまあの成績。
 帰りも頑張れば、最終の新幹線に間に合うかも知れない。できることなら今日中に帰宅 しておきたい。
 門の石段に座って、温かい味噌汁でお握りを食べる。事務局が運搬してくれたシューズ やシャツを取り替えている人も多かった。小生はいつも、スタートしたときの着の身着の ままで通している。その方が、耐久レースに相応しい。
 脚に軟膏を塗り込んで疲労を抑える。

◆筋肉消炎剤(バンテリン)の効果
 ゆっくり休んでいる人達をよそに、11時12分に下山開始。初めのうちは、右踵の底 が痛く走れなかったが次第に慣れ、軟膏も効いてきて脚が軽くなり、思いっ切り駆け下り た。何人抜いただろうか。
 山上や途中での展望は悪く、風物を楽しむようなコースではない。
 梨子の木峠や黒川峠の登りには、少し歩いたが、下りになると力を発揮して、登りで抜 いていった人達を全部、抜き去ってゴールまで追いつかれることはなかった。
 特に黒川峠からの下りでは、シューズを脱いで足の裏や指の関節や踵、甲などをはじめ ふくらはぎや腿などあらゆる箇所に軟膏を塗って発熱を抑えたので、いい気分で飛ばして 何人抜いたことやら。いろいろな大会ですっかり顔馴染みになっている人も数人抜いた。
 下り坂が終わったところの自動販売機で休んでいる人に「頑張りましょう」と声をかけ たら「飲みませんか」と缶を突き出した。なんとビールである。まだ20キロ以上も残っ ているというのに。
 ウルトラランナーの中には、水分の補給は水よりビールがいいという凄い人が何人もい る。
 16時30分、最後のエイドステーションに寄る。
 永田さん(『さくら道260Kmウルトラマラソン』で小生より早くゴールインした6 5才のベテランランナー)が味噌汁を啜っている。スタミナを付けて一気にゴールインし ようという作戦とみえる。
 「あと何キロ?」「12キロくらいです」
 「この分だと6時までに届くねぇ」「うむ」と無理でしょうってな顔をしている。
 大福餅を2切れと水をお代わりして、地図に時間をメモしているとボランティアが覗き にくる。
 「1時間半あれば大丈夫だよね」と念を押すと「頑張って下さい」と議会答弁のような 模範的答弁が返ってきた。
 「永田さんお先に」
 彼は味噌汁に夢中で、他のことは眼中にない様子だった。

◆抜いて抜いて抜きまくる
 前方に1人発見。じわじわと距離を詰め、自動販売機に寄った隙に追い越す。後で分か ったがゼッケンNO141番。ゼッケンが前に1枚しかないので番号が分かり辛い。番号 が分かれば参加者名簿で調べられるのだが。
 更に1人に追いつき追い越す。
 先程のエイドステーションで充分補水した筈だったが、喉が乾いてきた。
 自動販売機に寄っている間に2人に越されて、引き離されてしまい1度は諦めかけたが 気を取り直して後を追う。
 夕焼けで赤く染まった和歌山の市街。
 次第に暗くなり代わりにネオンが輝きを増してくる。
 やっと1人に追いつく。
 「元気ですね」
 「いやぁ、今日中に博多まで帰りたいので・・・」
 簡単な会話を交わし、大阪から2度目の参加でゼッケンは40番と分かる。
 信号待ちの141番に追いつき追い越す。
 そろそろ和歌山城が見えていい筈だかとやや不安がよぎる。
 JR線の地下道を潜って一安心。
 道を尋ねていた人を追い越し、城の堀に突き当たって右折。堀に沿って右に廻れば反対 側の追い回し門に出る筈である。何度か角を曲がって市役所通りで更に1人を抜き、大き な交差点で左折、広くなった歩道を3人並んで猛進する。
 ゴールでは白いテープを張り、大勢が拍手で迎えてくれる。3人が両手を挙げてゴール に飛び込んだ瞬間、カメラのフラッシュが閃く。
 主催者の西峰さん達が握手で完走を祝福してくれる。
 「5時56分でしたよ」と40番。
 「そうですか、6時を切りましたか」とすっかり時計を見るのも忘れて浮かれていた。
 「引っ張ってもらって有り難う」
 「お蔭で最後まで走れました」
 「いやぁ、こちらこそ。みんなと一緒だったから頑張れた・・・」
お互いに相手を讃えて固い握手を交わす。
 握手をしながら同時にゴールインしたもう1人を確認すると、何と抜きつ抜かれつしていた 140番さんだった。

   膝や他の個所にいろいろな症状が出たにも関わらず大きな故障にならず、しかも予想外 の成績で無事完走できたことを宇宙の万物に感謝するとともに、本大会を企画運営した事 務局の皆さん、サポータを勤めてくれたボランティアの皆さん、また本大会を盛り上げて くれたランナーの方々に心からお礼を述べ、益々のご健勝を祈ります。




前夜の夕食会で
左から浅井婦人、浅井さん、八重樫さん
左から阪本さん、小生(見野)、堀池さん

東西南北駆けある記/  世界駆けある記/ マラソン大会/ ウルトラマラソン
気儘にジョギング/ 我らの仲間/ 福岡情報あれこれ

インターネット福岡/ 情報ふくおか/ 福岡県庁
ふくおかめずらしもん市場