平成6年7月23、24日 開催 
ゼッケンNo88 福岡市 見野 容 

 昨年、大会名に惹かれて参加したが、右脚の付け根が痛み折り返し点でリタイヤした。 今年こそ完走し夜叉ケ池まで行きたいと思い、『さくら道260Kmウルトラマラソン』 (4月30日〜5月2日)を完走したあとで申し込み、トランスアメリカ・フットレース のステージラン(8月14日に出発する第2陣)のトレーニングのつもりで参加した。
 7月23日(土)12時頃、集合場所の日吉神社に到着すると既に大勢が到着していて 準備に余念がない。
 ゴールデンウィークに『さくら道260Kmウルトラマラソン』を完走し引き続いて山 口100萩往還マラニック(250キロ)に参加、見事に完走した国内最高のウルトララ ンナー堀池さん、いろいろなウルトラマラソンに挑戦して好記録をのこしている若穂井さ ん、琵琶湖畔一周マラニックではボランティアで活躍していた浅井さん、どの大会にも顔 を出している吉田健治さん、ウルトラのベテラン梅野さん、大山さんなど萩往還の常連が 多い。岡田さん、金増さん、藤井さん、柴本さんなど九州横断の懐かしい顔も見える。  小野さん、千田さんはさくら道でサポーターとして頑張られた人。琵琶湖で意気投合し た長尾さんと連れの高松さんなどなど。

 「焼けましたね」が挨拶。
 大会役員やボランティアには、山口、越田、安田、酒井さん達の名がある。

 12時40分、日吉神社境内で開会式。
 山口実行委員長、渡辺大会長(神戸町長)、田中副大会長(坂内村長)、林顧問(神戸 町商工会長)、神谷顧問(坂内村商工会長)などの挨拶のあと蛇踊りが披露される。
 『夜叉ケ池伝説マラニック』の垂れ幕の下で全員並んで記念撮影。
 13時30分、一斉にスタート。
 第1ステージは、42.4キロとフルマラソン並だし、スタート時間も早いし、好天に 恵まれたので、皆なウエストバッグや、水筒を付けた程度の軽装である。
 赤の6番(赤は夜叉姫コース90キロ)を付けた篠田さんが「ジャーナル読んでます」 と話かけてくる。長尾さん、高松さん、千田さん、坂本さん達と一団になる。  夜叉堂に寄り、ランナーたちは「雨を下さい」と真剣に祈る。
 坂を登って霞間ケ渓に向かう途中、赤い翼のハングライダーが目に入った。
 アメリカから無事に戻ったらパラかハングを始めてみようかと思っているので「おー、 やってるな」と羨望の眼差し。右手の広場にいるいる。いろとりどりのハングライダーが 7、8機翼を休めて順番待ちをしている。

 14時32分、霞間ケ渓のCP(チェックポイント)9.2キロに到着。
 昨年、夜景が美しかったところ。今年は見通しがよい。地元の人に聞いたら神戸町や池 田町で、右手前方に見えるパラボラアンテナの側の小山の麓が揖斐川マラソンのスタート 地点だと教えてくれた。
 赤の13番は、眼鏡を掛け髭を蓄えて、鯛焼き君を歌った歌手の上条さんに似た人。
 この人と、黒の15番は、抜いても抜いても何時の間にか先を走っている。追越しなが ら「あれっ、また先でしたか」と声を掛けると、「皆のように走れないので、あまり休み ませんから」とこつこつと走っている。

 やがて道は、揖斐川べりに出て北上する。
 15時31分、朝鳥公園(17.2キロ)に到着。ここでもたっぷり補水する。
 昨年は闇の中を放流している音だけが聞こえた西平ダムの威容が聳えている。
 ゆるやかな登りが続く。30分間隔位でサポート車が待機しているので有り難い。
 時には、バイクを止めて給水してくれる人がいたが、ボランティアの人なのだろうか。

 16時09分、揖斐峡大橋西詰(21.5キロ)に到着。88位。
 大会役員の安田さんがいたので、一緒に赤い大橋をバックして写真を撮ってもらう。
 握り飯を御馳走になり、水をたっぷりと飲み、給水の世話をしていた可愛い子供達を撮 影している間に大分追い抜かれてしまった。
 1人抜き2人抜きしていると、またしても赤の13番や黒の15番に追いつく。

 18時5分、藤端村役場(34.3キロ)に着く。
 腰を下ろして握り飯やジェリーなどで腹を満たし、たっぷり水を飲む。スポーツドリン クやウーロン茶なども用意されていたが何よりも水が一番。
 ゆっくりしていると、長尾さん、阪本さん、69番(かなり年配の女性)達が追いつい て来た。皆が一休みしたところで、揃って出発する。
 昨年は、右の道を走ったが、今回は左に石灰で印が入っている。砂利の坂道となり、車 輪の跡以外はオオバコが生い茂り中、高校に通学した島原の山道を思い出す。
 砂利道の終わりで補水している間に、1人先に発つ。
 19時13分、第1ステージのゴール坂内小中学校に到着。107位。
 続いて長尾さん達が続々と到着。


 小中体育館で届けられた荷物を受け取り、入浴券と食券をもらい、すぐ近くの清流荘に 行く。広い座敷は満員で座る場所もない程である。とにかく風呂をもらう。
 篠田さんや千田さんの側に割り込む。篠田さんが盛んにビールを注いでくれる。
 乾いた喉から食道を通り胃に流れ込む苦さが堪らない。甘露!甘露!
 食事には好物の鮎の塩焼が2匹もついている。最高の御馳走だ。
 篠田さんがアルバムをとり出していろいろ説明してくれる。
 思い思いに仮装した安政遠足マラソンだとか、ヘルメットをかぶって川の中を走ってい るのとか、酒井さんや阪本さん千田さんなど顔見知りの人も多い。
 彼が詠んだという詩集ももらった。俳句だって難しいのに和歌を詠むなんて羨ましい限 りだ。
 堀池さん、若穂井さん、八重樫さん、安田さん、長尾さん、浅井さん、さくら道でサポ ーターを勤めてくれた浅井さんの奥さん、阪本さんなどなど多くの人と看板になるまで歓 談できて楽しい夜であった。

 第2ステージは88キロ。3時半のスタート。 
 この日も晴天。満月が西の空に残っているので懐中電灯は置いて行く。
 1晩休んだので、極めて快調。
 昨年の休息所、川上集会所(7.7キロ)を4時22分に通過。
 道は次第に登りとなる。神岳橋を過ぎて前方がV字型に開けた空の底に満月が沈みかけ ている。満月に引き寄せられたようにランナー達が駆けていく風景が、何とも美しくカメ ラを取り出して撮影する。

 6時29分、林道終点に到着。昨年は右足の付根の筋肉が痛みやっとの思いでここまで 辿り着き、涙を飲んでリタイアしたところ。
 水を補給し、軍手の支給を受けて早々に出発。行き届いたサービスに感心する。

 すぐ下りになって、幅50センチもない山道となる。
 彼方にそそり立った岩場がある。夜叉ケ池はあの向こうだろうか、手前だろうか。
 滲み出てくる水に、どろどろになっているところにはロープが張られボランティアの人が、「ロー プを握って登ってください」と注意してくれる。本当に御苦労さんです。
 擦れ違いながら「あと20分ですよ」と教えてくれる人もいる。
 池の下り口で折り返してくる篠田さんと擦れ違い、急峻な谷をバックに写真を撮っても らう。
 茂みに囲まれた池、干天続きに水面がかなり下がっているように見える。
 これが伝説の夜叉ケ池か。感無量!

 7時33分、チェックのあと記念撮影。サービス満点である。
 小さな祠がある。それぞれ雨乞いを祈願、居合わせた赤の13番さんと記念に1枚。
 一休みして出発しようとしているところに、金増さんや阪本さんや高松さん達が到着。
 泥濘のところで「見野さんは早いね、あと30分かな」と堀池さんと擦れ違う。どこで 道草食っていたのかな。
 途中、山伏の恰好をした一団と擦れ違う。『夜叉ケ池伝説道中まつり』の行事に参加し ている関係者の一行であった。

 8時24分、林道終点に戻った。
 握り飯を御馳走になっていると「九州からですか」と声を掛けられる。
 「福岡からです」「九州横断はどこからどこまでですか」など暫く話し込む。
 「見野さんでしたね。私は徳留です。太宰府にいました。昨年も会いましたよ」
 「そうでしたかね。宝満(太宰府の裏にある標高869メートル、急峻なコースだが県 民格好の登山コース)よりきついですね」「宝満の方がきつくないですか」
 「昨年はここでリタイアでしたね。今年は大丈夫ですか」「ええ好調です」
 日差しが強くなってきた。汗がとめどなくながれる。エイドでは水やお茶で補水を怠ら ない。
 10時10分、川上集会所に着く。堀池さん、梅野さんなどが休んでいた。サポーター も加えて記念撮影。
 11時12分、坂内小中学校に到着。堀池さんがビールを飲んでいる。梅野さんもやっ ている。篠田さんが「どう」と缶を差し出す。いいなあ、夜叉姫コースはここがゴールだ もんな。
 我々雨乞い伝説コースは、まだ、40キロ残っている。コップに半分もらったが、美味 かった。「ここをゴールにしてゆっくり飲んだらどうだ」と悪魔が囁く。
 少しでも身軽になって一刻も早くゴールインしたいとカメラをリュックに入れて置いて 行く。
 ダム湖岸公園を過ぎ砂利道の入り口の移動サポートで堀池さんが、またもビールを飲ん でいる。私もその内試みてみよう。

 2時57分、揖斐川峡大橋西詰に到着。テーブルの上を見ると、タクワンを芯にした海 苔巻があるではないか。風に当たってポロポロになっていたが美味かった。もう一つもら う。塩がきいていて美味しい。水もたっぷりと飲んで乾きを癒し別れを告げる。
 最後のチェックポイント霞間ケ渓に4時55分到着。
 若いサポーターのふくらはぎに赤い斑点が幾つもできている。尋ねるてみると“ぶと” に刺されたという。“ぶと”はいつまでも痒みが残って堪らない。「済みません。我々の ために」
 アイスクリーム入りのシュークリームをもらって生き返った。
 ゴールまであと6.4キロ。小さい川に沿って土手を南下する。
 神戸の市街が近くなったところで、擦れ違ったサポーター
 「アメリカに行かれるのですよね」
 「そうです」
 「頑張ってきて下さい」と。
 坂本さんとステージランに参加することが知れ渡っているらしい。

 拍手で迎えられて日吉神社の境内にゴールイン。テープが張られカメラマンが構えてい る中をポーズをとって飛び込む。5時42分。
 昨年リタイアしているだけに感激は大きい。
 多くのサポーターの方々の優しい心遣い、行き届いた大会運営。楽しく走れました。本 当に楽しい大会でした。来年は、また仲間を連れて参加しますね。

 完踏賞をもらい、荷物を受け取ってそのままの格好で別れを告げる。広神戸駅6時09 分発に間に合った。電車の中で着替える。
 名古屋駅で25分の待ち合わせで、のぞみ23号に乗車する。
 感慨に耽りながら寝込んでしまっていた。


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