第23回 高血圧の生活治療


 高血圧については既に2回けんこうニュースに書きました。今回は高血圧の場合に生活上、具体的にどういう点に注意が必要かを書きます。

 (1)肥満を是正
 肥満の人はそれを正すことで血圧が正常化する場合があります。理想体重に比較して10%以上の肥満の人はカロリー制限を試みましょう。理想体重は身長(メートル)×身長×22で計算できます(例えば身長167cmの人は1.67×1.67×22=61.4kg)。具体的な方法はけんこうニュース6号を参照して下さい。

 (2)塩分を控えめに
 昔は塩分制限について厳しく言われました。事実、食塩の摂取量の多い地域では高血圧の患者さんが多いのです。しかしその後の研究で、塩分の摂取と血圧が無関係な人も相当いる事が分かって来ました。ですから最近では昔のように厳しくは塩分制限の指導をしません。しかし極端で無ければ塩分制限は副作用はありません。そして自分で出来る治療ですから、やはり重要です。
 現在、日本人は塩分を平均12gとっていると言われます(欧米では約6g)。そこで下の表をみて自分が毎日どのくらいの塩分をとっているのかチェックします。平均を超しているようならまず平均に収まる様に努力してみて下さい。平均をクリアーしているなら7〜8gくらいまで減らしてみて下さい。それ以上の厳しい制限は場合によります。担当医と相談して下さい。

食べ物の中の塩分量
 (3)運動治療
 昔から運動は血圧治療に有効であることが経験的に分かっていました。その事を世界ではじめて科学的に証明して実際の診療に取り入れたのが、福岡大学の荒川規矩男(キクオ)教授です。これは福岡発の世界に誇るべき業績です。
 荒川教授によると『ニコニコペース運動』といって顔をしかめないで済むような軽い運動を毎日するのが理想的だそうです。具体的には1週間に6回、毎回30分で3キロメートルを早歩きする。厳密には必要運動量は個人差がありますが、基本的にはこれだけです。

 (4)嗜好品
@アルコール:日本酒に換算して1日2合以上のアルコールをとる人は血圧が高くなる傾向があります。
Aタバコ:血圧には直接影響はないといわれています。しかし動脈硬化の原因になります。血圧治療の目的は動脈硬化を予防することですから止めることが望ましいのです。
 またタバコの害は含まれる有毒成分の作用ですから使う量に比例して悪いです。

 (5)薬について
 生活に注意しても拡張期圧が100を超え続けるような高血圧に対しては薬を使います。高血圧の薬は飲みはじめたら一生のまないといけないと思い込んでいる人が時々いますが、それは迷信です。高血圧薬は麻薬ではありません。薬でコントロールがついたら、折角だからそのコントロールを続けた方が良いですよ、ということに過ぎません。また生活治療の成果で薬を減らしたり、止めたり出来る場合も少なくありません(けんこうニュース14号)。
 服薬を継続するかどうかはあくまでも患者さん自身の問題ですから、最終判断は患者さん自身が自分の責任で決めなければなりません。

けんこうニュースバックナンバー
  5号:血圧を測ってみよう        6号:カロリー制限の実際
  14号:クスリ、いつまでのむのか?  19号:24時間血圧計の話